介護施設で転倒事故が起きてしまい利用者がけがをしたとき、家族から治療費を介護事業者が負担するように求められることもあります。
高齢の方であれば転倒事故により骨折などのけがを負い、数か月治療が必要となることもありますが、このような場合にはどのような対応が適切なのでしょうか。
介護施設で起きた事故で利用者がけがを負った場合、まずは事故の経緯を調査して治療費の支払いを含む賠償の方針を決定することが必要です。
それまでの間に、利用者やその家族に対し、今後の治療費はすべて介護事業者が負担するといった約束をしてしまう対応は避けたほうがよいでしょう。
もし利用者の家族から強い口調で治療費の負担を迫られたときにおいて、事故の詳細な経緯などを把握できていないことから約束をしたと受け取られてしまうような対応を取ってしまう介護事業者も少なくありません。
しかし事故が発生した直後に今後の治療費の負担を求められたのなら、まずは治療費相当額を介護事業者が負担するべきか事故の経緯を調査し、十分に検討した上で知らせる旨を伝えるようにしましょう。
調査は治療費に関する領収証の提示や、通院先の病院の診療記録を開示してもらうことが必要となることもあるため、手続きに協力してもらいたいことも伝えておくようにします。
真摯に対応することは大切ですが、その場で治療費を全額負担するといった約束は控えるべきです。
保険会社などから治療費相当額は保険で対応できるといったことを伝えてもらった場合でも、詳細な事故の経緯が把握できていない中で賠償の方針も決まっていないのなら、治療費負担を約束することは避けてください。
介護施設に明らかといえる過失があったとされるときには、事故直後でも治療費負担を約束する対応も考えられます。
ただ、この場合でも賠償の方針が決まるまでは治療費負担を約束する対応は控えておいたほうが無難です。
利用者は高齢者なので、事故が起きるよりも前にあった疾患に関する治療費や入院費がかかる場合もあります。
事故後に発生した治療費すべてが事故に起因するものとは限らないため、今後発生する治療費を全額負担することを約束するのではなく、提出してもらう領収証などから事故と関係が認められるものについては負担すると伝えたほうがよいでしょう。
早期に解決しようと、たとえば解決金・和解金・見舞金といった一定の負担を約束することもあるでしょう。
ただ、これらの支払いにより介護事業者は問題が解決できたと考えていても、利用者側は納得しておらず再度別途支払いや治療費負担を求められることもあるようです。
そのため見舞金などの一定の支払いや治療費負担を検討するのなら、合意書を作成した上で支払いや負担を行うようにしてください。