介護福祉事業情報ラボNursing care work Information Lab

介護施設で起きた利用者に対する虐待事件から改めて考えておきたいこと

2019.11.24
分類:リスク

20194月、東京都品川区の介護付き有料老人ホームで元介護職員の28歳の男が、82歳の入居者の男性に暴行し、殺害した疑いで逮捕されました。

この容疑者の男は系列の介護施設で4年以上という勤務経験があり、夜勤の時間帯にはリーダーとして業務を行っていたようです。

介護施設の職員が高齢者に対する虐待を行う事件は後を絶たない状態ですが、その理由として中堅職員に負担が集中する傾向があることが関係しているとも指摘されています。

利用者に対する虐待事件が起きたきっかけは?

今回の事件で亡くなった82歳の男性は、家族に暴行を受けていることを訴えており、施設で設置されていた防犯カメラにも虐待が行われている様子が記録されていました。

3階から転落したときに加わる力と同じぐらい衝撃を受けており、肋骨が複数折れていようです。

このような痛ましい事故が起きないように、介護現場の人材不足を早急に改善させることが求められます。

介護業界は人の命を預かる性格上、人材が不足していることはスタッフ一人ひとりの能力に頼らざるを得なくなってしまうからです。

 

介護現場はどのくらいハード?

施設に入所している利用者に対する介護業務は多岐に渡ります。

たとえば食事という介護だけで考えたとしても、まず食事を取る場所に移動させるだけでも大変な労力が必要です。

ただ声を掛ければよいだけでなく、移動の際の見守りも必要ですし、身体状態によっては車いすを利用するので移乗させることも業務として加わります。

食事の前にトイレに行きたいと利用者がいえば、排泄介助も同時進行で必要になります。

食事中も目は離せない

食事の種類も利用者によって、普通食なのか、刻み食なのか、ムース状のものなのかなど形状が異なり、食べ具合も一人ずつ注意が必要です。

食事を一人で行うことができるのか、それとも半分介助なのか全介助なのかにより、サポートにかかる負担も変わるでしょうし、利用者の中には食べたくないといって口にしない方もいます。

声掛けしながら場を和ませ、楽しく食事してもらえるようにするのもスタッフの努めとなります。

食事後もさらに見守りが続く

そして食事と切り離すことができないのが投薬ケアです。看護師を中心として配薬されますが薬を口に入れようとしても落としてしまう方もいますし、うまく飲み込めない方もいますので、飲み終わるまで見届けることが必要です。

さらに食事後には口腔ケアの確認を行い、今度は部屋やリビングへ移動しますが、その際にも見守りが必要です。

食事だけでもこの作業を13回繰り返さなければならず、他にも夜間対応や入浴・排泄の介助など、様々な心配りや注意、体力が必要です。

 

人材不足が異常事態を発生させてしまうことに

介護サービスの質を低下させないためにも、ある程度の人数の人材は欠かすことができませんが、このようなハードな状況で人手が不足していればスタッフ一人ひとりにかかる負担がとても大きなものになってしまいます。

人材不足はスタッフのストレスが溜まりやすい状況を作ってしまうわけですが、だからといって利用者への虐待や暴行が許されるわけではありません。

ただ、人材不足が異常事態を発生させるスクを高めてしまうことを理解しておく必要はあるといえます。