財政制度等審議会は、ケアプランを作成する流れにおいて、複数の事業所のサービス内容や利用者の負担について加減算の有無も含め説明することをケアマネジャーに義務付けるべきという考えを明らかにしました。
透明性を高めることによって給付費を抑制できると考えるからのようです。利用者がサービスを比較・検討しやすいように、サービスの質や価格競争がより活発化される環境を生み出すことを狙っています。
介護サービス事業者は、介護報酬を下回る価格の設定ができるなど、サービスだけでなく価格の競争も可能な状況です。ただ現実には、サービス価格が介護報酬の上限に張り付いた状態といえるでしょう。
そこで価格を透明化させるという考えのようですが、実際、利用者がサービス事業所を価格だけで選ぶようになってしまう危険性が出てきます。
2021年度の次の改定をめぐる論点となるでしょうが、厚生労働省の審議会には財務省と同様の考えの委員も複数参画しているため、ケアマネ協会と対立することが予測されます。
加算を多く算定している介護事業所の場合、それに見合う質の高いサービスを提供しているとされています。ただ、加算を算定できる状態でも利用者の負担が増えてしまうことから、あえて算定しない事業所もありますし、加算の算定要件を満たしていても文書作成に手間がかかるから算定しない事業所もあります。
他にも人員体制が変動することなどで加算を算定しないという事業所もあるので、介護サービス費用が高いのは介護の質もよいけれど儲け主義の事業者で、介護サービスの質はよいのに費用は安いままの事業者は儲け主義ではない良心的さがあると判断されるのは納得できない部分があるといえます。
多くの加算を算定している事業所の場合でも、スタッフそれぞれの質が良いとはいえない可能性もあるので、ケアマネジャーが利用者にいろいろなサービス事業所の価格を提示したとしても、価格が高いから質も高いとは言い切れないところもあります。
財務省は利用者が最終的には価格で決めることになると予測しているようですが、本当にそうなってしまうと事業所間で利用者獲得のため価格競争がイヤでも起きてしまい、介護保険が目指す質の良いサービスから乖離する可能性のほうが高くなります。
複数の事業所のサービス内容と利⽤者負担を説明しなければならなくなれば、複数の事業所の詳細を調べ尽くさなければならなくなります。しかしそのような対応は実務上、難しいともいえるでしょう。
その場合、ケアマネジャーはあくまで事業所が算定している加算をもとにした情報提供を行います。しかし先に述べたような加算算定の事業は事業所ごとに違いがあるので、価格のみで事業所を選ぶことは本当に正しいのかあらためて考えるべきといえるでしょう。