まじめに働いているのに暮らしがよくならないとう日本経済の課題克服に向けて、安倍政権が打ち出したデフレ脱却と富の拡大を目指すための経済生産がアベノミクスの3本の矢です。
さらにアベノミクス第2のステージにおいて新3本の矢として挙げられた3つの項目は、希望を生み出す強い経済、夢をつむぐ子育て支援、安心につながる社会保障となっています。
このうちの1つである安心につながる社会保障の中、介護離職ゼロという数値目標を掲げていますが現実的でないという意見が多いようです。
政府は介護離職ゼロにさっそく取り組むため、具体策として首都圏で不足している特別養護老人ホームなど介護施設の増設に向け、国有地を貸し出すという方針も打ち出しています。
民間相場の4分の1程度の賃貸料で貸し出すことによって、特別養護老人ホームの待機者が入所可能となる施設を増やそうという動きのようです。
しかしこの動きが、はたして介護離職ゼロにつながるのかといった疑問の声が早くもあがっています。
介護離職とは、そもそも親などが要介護状態になってしまい、身近で介護を行う必要ができたことで仕事を続けることが難しくなり離職することです。
親が要介護状態になっても空いている介護施設がなく、自らが介護することになったので離職しなければならないのなら、入所できる介護施設を増やせばよいと考えたのかもしれません。
しかし介護スタッフの人材不足は顕著となっており、仮に介護施設を増設すればその施設で要介護者のケアを行う介護スタッフはどこから集めるのでしょう。
少ない人数で施設を回すことになれば、十分なケアの提供はできなくなるでしょうし、介護スタッフ一人ひとりにかかる労働の負担も大きくなります。
介護スタッフを確保できなければ、たとえ介護施設を増設しても介護サービスの質は低下し、介護スタッフの処遇も悪化してしまうと考えられるのです。
なぜ介護スタッフが確保できないか、それは介護施設の過重労働や低賃金といったネガティブイメージが関係しています。
依然として求職者が介護スタッフの給料は安いというイメージを抱いたままでは、介護現場で働きたいと感じてもらえなくなってしまうでしょう。
介護サービスの提供に対する報酬は介護保険から給付され、そこから介護スタッフに対する給料が支払われると考えたとき、介護給付を増額すればよいのでは?とも考えるかもしれません。
しかし介護給付の財源は半分が税金、半分が40歳以上の方たちが納めた介護保険料ですので、簡単に介護給付を増やすことはできません。介護給付を増やすなら、他の支出を削減できないのなら増税する、または介護保険料を引き上げるという、どちらかを選ぶことになってしまいます。
これらのことも踏まえ、介護スタッフそれぞれの負担を軽減するには、やはり介護人材を多く獲得することが必要不可欠な状況にあるといえます。