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ベビーブーム世代が80歳を迎えるアメリカの介護施設は今後不足する一方?

2020.07.15
分類:その他

2020年になり、体力が衰え介護を必要とする高齢者が増えているアメリカ。

そのアメリカは、あと5年たてば約7700万人というベビーブーム世代の第一陣が80歳を迎えることになります。

80歳といえば手厚い介護サービスを長期に渡り必要とする年齢なので、介護施設の需要は一気に高まると考えられます。

さらに2020年代が終わり2030年代に突入するころには、ベビーブーム世代の中で年齢が高い数百万人は85歳に達することとなり、よりいっそう介護やサポートを必要とすることになると予想されているのです。

今後高齢化が進み続けるアメリカ

85歳以上になると約4割の高齢者が手厚い介護を必要とするようになり、日常生活を送る上での食事や着替え、入浴などによる動作を一人でできなくなる可能性が出てきます。

年齢が高まれば介護だけでなく、疾患など患うリスクも高まりますが、中でも認知症リスクは注目される部分です。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)による調査結果によると、70代で認知症を発症している方は5%程度におさまるのに対し、80代になれば4人に1人の方がアルツハイマー病や血管性認知症といった記憶障害と診断されているようです。

アメリカの全米長期介護保険協会でも、保険金を請求している75%近くは80歳以上の高齢者であるとしており、そのうち45%86歳以上の高齢者からのようです。

アメリカの高齢者は2020年代が終わるあたりから、80歳以上が2千万人、900万人近くは85歳以上に達すると推移されています。

 

アメリカの保険制度は使えない?

アメリカ政府も介護に対する準備ができておらず、高齢者に対する医療費はカバーできても、長期在宅介護に向けた給付制度などを定めようと動き出したのは最近のことです。しかも給付対象となるのは、メディケア・アドバンテージ・マネージドケアプランに加入している方だけです。

介護を必要とする高齢者が増えるという事態に備えがほとんどできておらず、アメリカで暮らす高齢者の家族の多数も多大な介護費用を支払う準備もできていません。

介護保険を利用できる高齢者は一部のみ?

介護施設への入所以外にも通院などに対する費用もかかるのに、入院費用などの病院保険であるトラディショナル・メディケアと外来診療保険に加入している高齢者の3分の2は長期介護保険の対象外です。

しかしほとんどの高齢者は自分たちが対象外となる事実を認識できていない状況といわれています。

アメリカは公的な長期介護保険は存在しない先進国であり、介護保険を創設しているのは唯一ワシントン州のみです。

 

保険制度を整備する時間はなくなった?

ベビーブーム世代に向けた国が運営する保険制度を策定しようとすれば、現役世代の所得から移転させることになります。

しかし新型コロナウイルスの影響などもあり、現在解決策を検討する時間はなくなっています。時間が経過すれば高齢化は進み、介護施設や医療機関への需要だけが大きくなってしまうため、社会的変化への対応が迫られている状況といえるでしょう。