介護福祉事業情報ラボNursing care work Information Lab

介護事業者も見逃せない介護中の家族を殺害してしまう痛ましい事件の背景とは

2021.05.24
分類:その他

つきっきりで介護を行う親や祖父母を殺害してしまう事件が起きることがありますが、過酷で孤独な介護の現状がその背景にあるといえます。

介護サービスを提供する介護事業者も、この現実を見過ごすことはできないといえますが、なぜこのような痛ましい事件が起きてしまうのでしょうか。

親などの家族の扶養義務はどこまで?

自身の財産や家族に関しては民法に定めがありますが、民法では配偶者・直系血族(祖父母・父母・子・孫など)・兄弟姉妹に、未成年・高齢・障害・病気・失業などで経済的に自立できない場合は扶養する義務を課しています。

血族であれば愛情や共同生活の連帯感などで、自発的に生活に必要な資金の援助をすることが期待できるからとされていますが、扶養能力がないのに扶養しなければならないわけではありません。

扶養する能力がある家族が複数いれば、世代の近い方から義務を負うこととなりますが、経済的な援助に限定されています。

仮に扶養義務があるからといって高齢者を引き取り、同居して介護することを強制されれば、介護離職が必要になることもあるでしょうし終日介護に時間を費やし心身をすり減らしてしまうからです。

そこから高齢者を虐待してしまう、または殺害してしまうといった事件も十分起こりうるからといえます。

 

子や女性が介護を引き受けるのは当たり前?

社会的に、子が親の世話をするのは当たり前といった意識が強いといえます。

しかし共倒れしてしまわないように、介護をする家族とそうでない家族が役割分担するなど、それぞれの意思を尊重しながら無理にならない配慮も必要です。

家族介護は強制されず任意だからこそ、親族間との調整がより重要となるでしょう。

さらに日本社会はまだまだ男は仕事、女は家庭といった性別役割分業の気質が残っています。

しかしすでに女性も社会に進出し、夫婦で共働きする世帯も増えていますし、キャリアアップを目指す女性も増えました。

しかし根強く残る性別役割分業の意識と社会構造で、女性が介護をしたほうがよいとすることも問題です。

 

痛ましい事件を増やさないために必要なこと

居宅サービスを利用している高齢者も増えていますが、地域密着型サービスとして定期巡回訪問介護・夜間対応訪問介護・認知症対応の共同生活介護などがあります。

在宅であれば特定の家族だけが介護をすべて引き受けず、同居していない家族も協力しながら分担し、居宅サービスや地域密着型サービスも積極的に活用することが必要なのです。