介護福祉事業情報ラボNursing care work Information Lab

福祉業界と法律の関係|認知症の方が起こした事故を改めて考える

2020.05.16
分類:その他
福祉業界で働く方に知っておいてほしいのが、認知症の高齢者が事故を起こし訴訟となったケースなどです。 2016年3月、認知症で責任能力のない断線が徘徊し、電車にはねられて亡くなる事故が起きました。 この際、男性の家族は鉄道会社に対して賠償責任を負わなければならないのかが問題となりましたが、最高裁による法律上の判断は鉄道会社側の敗訴という結果に至ることとなりました。 認知症高齢者を介護する家族の監督義務が問われる裁判となったわけですが、民法など法律上では責任能力のない方の起こした事故による損害は、被害者を救済するため監督義務者が賠償責任を負うとしています。 しかし男性の妻も高齢で要介護1の認定を受けていたため、家族に賠償責任はないという判決に至ったようです。

事故を起こした本人だけでなく家族も苦しむことに

認知症の方が事故を起こしてしまうと、本人は罪の意識がないことが多く、ましてやそれまで真面目に生きてきた方などの場合、家族はとてもつらい思いをすることとなります。 そのため認知症の男性が起こしてしまった鉄道事故も、最後に親が加害者になることを避けようと、男性の子を筆頭に最高裁まで争った形となりました。 日本は高齢化が進んでいるため、認知症の高齢者も増えていくと考えられます。 もし認知症の方が事故など起こしてしまった時、法律的に誰がその責任を取るべきか考えてしまうものですが、認知症の方が安心して暮らせる仕組みや環境を整備することが必要なのです。

安心して暮らせる環境やサービスの整備が必要

施設に入所するのではなく、在宅でケアを受けながら暮らす高齢者も多くいます。しかし自宅でのケアが難しくなれば、高齢者向け住宅などに住み替えるといったことも選択肢として検討する必要が出てくるでしょう。 ただ、高齢者向け住宅に住めば安心というわけでもなく、地域とつながりを持ち連携する体制は整備しておくことが求められます。高齢者向け住宅などで看取る場合や、認知症の方の対応を行うとしたら、医療との連携は欠かすことができないからです。

核家族化が進む中で安心して生活してもらうために

できるだけ住み慣れた場所を離れたくないと考える高齢者も多く、核家族化が進む中で自分の住んでいる場所に親を呼ぶことのできない子などもいることでしょう。 かといって親が住む地元に帰って仕事を探すこともできず、親子が別々の場所で生活しながらどのように支えていくのか考えていくことが必要です。 そのためにも住み慣れた地域で生活できるサービスを充実させることや、見守り体制の整備やつながりを持つなど、地域包括ケアや地域づくりを実現することが急務となっています。