福祉・介護業界の離職率と職場環境は変化している?
公益財団法人介護労働安定センターでは、令和元年度に「事業所における介護労働実態調査」と「介護労働者の就業実態と就業意識調査」を実施しています。
全国の介護保険サービス事業所から無作為に抽出し選ばれた1万8,000事業所に対するアンケート調査の結果のため、介護現場が抱えている問題や福祉業界の離職率なども把握できます。
福祉業界の中でも介護現場の離職率は?
訪問介護員や介護職員の離職率は、今回の調査では横ばい傾向となっていました。
訪問介護員と介護職員の平成30年10月1日から令和元年9月30日までの1年間の採用率は 18.2%、離職率は15.4%となっており一昨年とそれほど変化はありません。
サービス提供責任者の採用率は11.8%、離職率は12.6%となっており、訪問介護員や介護職員よりは低いものの、採用率のほうが離職率よりも低いことが確認できます。
サービス提供責任者は訪問介護員から内部登用することも多く、外部採用は低めの傾向です。
賃金はわずか減少に
離職率の高さが否定できない介護業界ですが、激務の割に賃金が低いこともその背景にあると考えられています。
実際、今回の調査結果をみても、労働者の所定内賃金はわずかに減少していました。
技能・経験のある介護職員に対して処遇を改善させることを目的とした、勤続年数10年以上の介護福祉士の月額平均8万円相当の処遇改善。
この特定処遇改善加算は令和元年 10 月に創設されましたが、6割以上の事業所が加算を算定する意向を見せています。
今後、特定処遇改善加算の算定対応を行う事業所が増えれば、離職率も低くなることが期待できるとも考えられます。
年次有給休暇の平均取得日数は?
令和元年4月からは、年次有給休暇の新規付与日数10日以上の方について、年5日の取得が義務付けられています。
1年間の取得状況の調査結果を見ても、取得義務対象の労働者が取得した有給休暇は介護業界平均で7.0日となっており、職種別にみると看護職員7.6日で最も多く、介護支援専門員が7.5日で次に多い結果となっていました。
訪問介護員は7.1日、介護職員6.8日と看護職員や介護支援専門員より低いため、有給休暇を取得しやすい職場環境づくりにより、今よりも離職率を低下させることが期待できるでしょう。
外国籍労働者の活用も方法の1つ
外国籍労働者の受け入れを行っている事業所数は6.6%と、数値だけ見れば低いですが一昨年前が2.6%だったため、かなり活用が進んでいるようです。
受け入れ方法は、技能実習生・留学生・在留資格「介護」がそれぞれ2割ずつで、労働力確保や現場に活気が出るといったよい評価が見られ、心配されがちな利用者との意思疎通やコミュニケーションのとりにくさなどの不安感は低くなっています。
離職率が改善されず、現場の人手不足に悩まされているのなら、外国籍労働者の受け入れ体制を積極的に整備していくことも方法の1つといえるでしょう。