福祉業界に求められる働き方改革と現場で求められる実務対応とは
すでに福祉業界でも働き方改革は待ったなしの課題といえますが、その背景には人手不足が関係しています。
しかし福祉業界は人材確保が厳しく、人材流出や優秀な人材を採用できないなど、経営上のリスクが高い状況です。
そのため働き方改革により、人材を増やし流出を防ぐことが必要といえますが、さらに付加価値を高めるためにも重要なことといえるでしょう。
そこで、福祉業界ではどのような働き方改革が必要なのか説明していきます。
福祉業界で対応しなければならない働き方改革の内容
働き方改革とは、働く方がそれぞれの事情に応じた中、多様で柔軟な働き方をするための制度です。
たとえば介護施設などで働くスタッフが、それぞれ納得した状況の中で将来の展望を持つことのできる働き方改革が必要となります。
働き方改革関連法により、具体的な内容が順次施行されていますが、大きなポイントは次の4つです。
労働時間の上限規制
法定労働時間は1日8時間・週40時間と決められており、法定休日は毎週少なくても1回取ることが必要です。
この法定労働時間を超えるときには、労使間で36協定を締結し届出なければなりません。
そもそも改正前は法定労働時間を超える時間外労働時間は月45時間・年360時間でしたが、この限度基準以内の時間で36協定が必要となります。
そして特別な事情などで36協定を超えた労働時間が必要となる場合には、特別条項付の36協定を結ぶことにより、年間6か月まで限度基準を超えた時間外労働が可能となります。
ただ、特別条項には上限時間が決められていませんでしたが、改正後は特別条項があっても1年間の時間外労働と休日労働は月100時間未満・2~6か月平均80時間未満でなければなりません。
年次有給休暇の時季指定義務
労働基準法では、雇用日から6か月間継続勤務し、6か月間の労働日8割以上を出勤した労働者には、原則10日の年次有給休暇を付与することが必要です。
正社員だけでなく、パートタイム労働者など短時間労働者でも、一定条件のもとに付与されます。
しかし実際には、年次有給休暇を取得できる権利は与えても、取得しにくい環境などで消化しきれないことが問題視されていました。
改正後は、年次有給休暇を年5日、必ず労働者に取得させなければなりません。
残業の割増賃金率引き上げ
現在は、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は大企業のみが50%ですが、令和5年4月1日からは中小企業もこの割合に引上げとなります。
雇用形態に関係なく公正な待遇を確保すること
正社員と非正規社員に不合理な待遇差があると、現場で勤務するスタッフのモチベーションも上がりません。
そこで、どのような雇用形態だとしても公平な待遇となるように、中小企業でも令和3年4月から次のような項目が実施されています。
・不合理な待遇差は禁止
・労働者に対し説明義務を強化
・行政による助言・指導