福祉業界の市場規模は拡大傾向にある中でM&Aを選択するメリット・デメリット

日本は少子高齢化が進み、福祉業界でも要介護人口増大が問題視されていますが、今後さらに需要が高まれば市場規模は拡大することが予想されます。
しかし福祉業界では人手不足が深刻化しており、新型コロナウイルス感染予防対策などの費用もかさみ、拡大する市場規模とは裏腹に厳しい経営状態となっている事業者が増えています。
労働条件や労働環境など整備できなければ人材不足問題は解決できないと考え、中にはM&Aを選択する事業者も少なくありません。
そこで、福祉業界の中でも介護分野のM&Aにはどのようなメリット・デメリットがあるのか説明していきます。
M&Aとは?
M&A(エムアンドエー)とは、「Merger(合併)」「and」「 Acquisitions(買収)」の頭文字を取って省略した呼び方で、「会社または経営権を取得すること」を意味します。
福祉業界の中でも介護分野は、人手不足によってサービスの質が低下したり労働環境が悪化したりなど、離職率上昇や経営状態悪化が危惧されている状況です。
市場環境は厳しさを増しているといえるため、他社との合併や買収で事業を続けることを選択する事業者も増えつつあります。
介護分野のM&Aのメリット
1980年代のバブル期には敵対的買収が多かったですが、現在のM&Aによる買収は売り手と買い手が同意の上で進めていくことが通例です。
従来までの会社を乗っ取るというマイナスイメージではなく、事業を続けるための方法として活用されているため、売り手と買い手が公平な関係になれるような努力もされています。
介護分野でM&Aを行う場合、売り手側には次のようなメリットがあると考えられます。
・事業を引き継ぐ人材がいなくても後継者問題を解決できる
・買い手に事業を継続してもらうことで廃業を避けることができる
・介護事業大手グループに売却することでグループ傘下に入ることができる
対する買い手側のメリットとして挙げられることは次のとおりです。
・新規で介護事業を効率的に開業できる
・介護施設・設備の設置や介護職員の雇用などの手間が省ける
・介護事業者のノウハウ・顧客・取引先をまとめて取得できる
介護分野のM&A市場の相場
介護分野でM&Aを検討する場合、希望する金額を相手に提示することになります。
金額に決まりはなく、当事者間で自由に設定できますが、双方が納得できる金額でなければM&Aは成功しません。
たとえばデイサービスや訪問介護など、業態を問わずに金額を設定するときには、対象となる事業の規模・利益など経営状況に大きく左右されます。
目安として考えられるのは、おおむね営業利益の3年前後分の金額となるでしょう。
ただ、人材・設備の充実度や立地の良さ、買い手候補が複数いる場合には、金額が前後することも考えられます。