請負工事と業務委託、この2つは発注者から受注者に業務を依頼する点で共通していますので、建設業界で同じ意味として使われていることもあります。
しかしそれぞれの言葉の意味は厳密には異なりますので、どのようなことを指すのか改めて知っておくようにしましょう。
請負とは、当事者の一方である請負人がもう一方の当事者である注文者に仕事の完成を約束し、完成後には発注者から請負人に対し業務の報酬が支払われることを約束する契約のことです。
そのため請負工事では完成が大きなポイントとなります。たとえば自治体などが発注者で建設業者が請負人である受注者であれば、建設工事が完成したときに完成物の引き渡しが行われ、その段階で報酬が支払われるという流れです。
受注者側は契約を締結した内容通りに建築物を完成させ引き渡しできれば、建設工事の内容は問われることはありません。
そのため建設工事を完成させる上で、下請負人などを使っても問題ないということです。
契約を結んだときに決めた期間を守ることができれば、そもそも想定していた人員よりも少ない人数で施工してもよく、期間内に完成させることができれば人件費削減にもつながるということになります。
ただ、完成し引き渡した建築物の品質が低下しているなど、契約した内容を満たすことができていなければ、発注者側から受領を拒否され報酬も支払ってもらえなくなってしまいます。
それに対して業務委託とは完成にとらわれることなく、業務を遂行すること自体がポイントとなります。
発注者から何を行えばよいのか業務の指示があり、受注者がそれに応じて注文どおりの業務を行うことができれば報酬が支払われる流れです。
成果物である完成物があれば「請負」、完成物はなく継続して発生する業務は「委託」と分けるとわかりやすいでしょう。
なお、建設業法上での請負契約は、名義が委託になっていることがあります。しかし先に述べた通り、工事による完成が目的で報酬を得る契約になっているのなら、業務委託ではなく請負契約とみなされます。
名義上の契約形態が違う場合でも、建設業法上で請負契約とみなされれば法律の適用範囲となることもあると認識しておきましょう。業務委託として契約を締結したとしても、契約内容や性質に対する理解が必要です。