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建設業の会計方式である工事完成基準と工事進行基準の違い

2020.04.05
分類:経営

建設業においては、会計方式において工事進行基準を適応させることが原則とされています。ただ、会計方式にはもう1つ工事完成基準もあるので、この2つは何が違うのか知っておいたほうがよいといえるでしょう。

そこで、工事進行基準と工事完成基準の違いなどについてご説明します。

工事完成基準の特徴

工事完成基準とは、長期の請負契約に適応される会計方式です。売上と経費は工事終了時の会計期に計上することになるため、工事が完成するまでの間に発生した費用は未成工事支出金という勘定科目を使い処理を行います。

この会計方式は従来の土木や建築、建設業で一般的だった会計方法であり、工事が終了したときの会計期まで累積された未成工事支出金と売上の差額が利益と判断できます。

会計上の確実性が高い方式といえるその一方で、工事が完了するまで赤字が判明しない点が問題となります。また、依頼側の不明瞭な要求などでどんぶり勘定になりやすい点もデメリットであるといったリスクが発生します。

 

対する工事進行基準とは?

工事進行基準では、工事が完成するまでの期間において発生する売上や経費を分散しながら計上していく会計方式です。

工事進行基準を適応させるには、工事収益総額・工事原価総額・工事進捗度という要素をしっかり見積もることができる工事計画でなければなりません。

工事収益総額と工事原価総額を正確に見積もることは比較的容易ですが、工事進捗度は客観的に把握することが容易ではないため、原価比例法などで判断することが求められます。

 

どちらを採用したほうが得?

工事完成基準の場合、工事が完成した後にだけ売上や経費を計上するのに対し、工事進行基準では工事が終了するまでの間、複数回に渡り計上を行います。

中間に修正や注文などが発生したことで赤字が出る場合にも、工事進行基準なら追加の注文に対する請求が都度行うことができ、完成後に大きな赤字が発生することはなくなります。

ただし工事完成基準よりも客観性やシンプルさという面では劣るため、発注者に対する入念な事前説明が必要となります。そのため契約合意に至らなくなり、機会損失につながる可能性も否定できない点はデメリットといえるでしょう。

そして会計処理の機会も増えるので、事務作業という部分で負担は増えます。進捗度も常に把握しておく必要があるので、組織全体で工事進行基準の体制を整備しておかなければ適応は難しいと考えられます。

ただ、工事完成基準を採用して工事完成後に大きな赤字を抱えてしまうことを考えれば、工事進行基準を採用したほうがメリットは高く見込めますので検討したいところです。