工事現場で人手不足にならないように、複数の建設業者で協力しながら労働者を現場に送り込むことはめずらしいことではありません。
しかしこのような行動は違法な派遣行為とみなされるリスクがあることも知っておきましょう。
自社の従業員など労働者を、他の建設業者が請け負う建設現場に他者の要請に従い働かせたというケースは、次のような状況です。
供給契約にもとづき労働者を他人の指揮・命令を受ける状態において労働に従事させること(労働者派遣に該当しないもの)
自己の雇用する労働者を雇用関係のもとで、他人の指揮命令を受け他人のために労働に従事させること(労働者を派遣先に雇用させる約束をしていないもの)
当事者の一方が仕事を完成させることを約束し、もう一方が仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束すること
この3つの中で、建設業者が他の業者の建設現場に労働者を送り込んだとしても、法的に問題にならないのは請負のみです。
労働者派遣法では建設業務の労働者派遣事業を禁止しています。
建設業務とは「土木、建築、その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務」とう定義があります。
左管、大工、鉄筋工、配管工などの建設工事現場で現場作業に従事する労働者のことであり、技術者、設計、経理、営業など従事する方は含みません。
建設業務を労働者供給や労働者派遣で行うと労働者派遣法違反となります。仮に請負に該当する契約を結んでいたとしても、実態が労働者派遣だとみなされれば偽装請負で違法行為とされてしまいます。
請負なのかそれとも労働供給なのか、違いが分かりにくいこともあるでしょう。
違法な労働供給にならないためには、労働の指揮命令を行うのが誰なのか、働く方が誰の指揮・管理のもとにあるかを確認しましょう。
建設現場で自らの責任で従業員に対し、業務上の指示を行い労働管理まで行うのなら請負ですが、他の業者の指揮命令のもとにあるなら労働供給に該当することになります。
たとえば、
・新人のみ建設現場に行かせ元請の指示で仕事をさせる
・発注者が他の事業者から送り込まれてきた従業員に細かな指示のもとで作業を進める
・発注者側から現場で働く従業員の履歴書を求め、事前に面談する場合
・業務に直接必要な機械・機材などは発注者が準備し、従業員側がそれを借りて使用する
などは請負ではなく労働供給とみなされる可能性があります。
ただ、個別の事情も勘案した上での判断となると認識しておきましょう。