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リ―マンショック後に増えた建設工事はオリンピック後どうなる?

2020.06.10
分類:経営

様々な産業や業種で人手不足の問題は発生していますが、マンションの建設工事現場でも人手不足は深刻化しています。

リーマンショック後、オリンピック需要などで建設業界の景気は回復したといわれていたはずですが、実際どうなのでしょう。

建設業界を左右する経済や社会の影響

建物の維持・管理に人手は必要不可欠ですが、今建設業界が深刻な人手不足に悩まされているその背景には、様々な経済・社会の変化が関係しています。

2008年のリーマンショックから、建設業は厳しい経営状態が続きました。しかし2011年に東日本大震災が起きてしまい、その復旧・復興工事をきっかけとしてだんだんと建設業界への風向きも変わり始めます。

そこから201212月、第2次安倍政権のアベノミクスにより景気が回復したとされ、オフィスビルや都市再開発事業などで民間の建設需要も回復したといえるでしょう。

2021年に開催が延期された東京オリンピックに関する直接的な投資は約1兆円といわれていますが、それに付随する民間ホテル新築や都市再開発、商業施設建設など間接需要も踏まえれば建設投資は10兆円と考えられます。

 

オリンピック開催後はどのような動きに?

ただし気になるのは、東京オリンピックが終わった後の反動です。

実際、イギリスでは2012年にオリンピックが開催されましたが、開催が決定した2年後の建設投資はピークを迎え、開催後も減少していきました。

ノルウェーでも1994年に冬季オリンピックが開催されましたが、この時にも外国からの観光客は増加しました。ただ、リレハンメル市内がメイン会場であり、市内のホテルの4割はその後倒産しています。

日本は都心部の再開発計画やリニア新幹線などがあるため、オリンピックが終わってからもそれほど心配する必要はないという声もあります。

 

長期で見れば建設投資は減少傾向

しかし長期で建設投資金額を見た時には減少傾向が続いており、建設投資の縮小と並び人手不足の問題もさらに深刻化されることが不安視されます。

人手不足でビジネスチャンスを逃すこともあるでしょうし、少ない人手で現場を回せば事故やミスにつながり状況が悪化する原因になる可能性もあります。

人材不足の背景には、3K職種という若い世代の認識が関係しています。さらに建設業の低利益体質は改善されておらず、実質的には8割以上の業者が赤字を抱えているとも考えられます。

 

建設業界全体で考えなければならないこと

低い利益率に加え、受注が少し落ち込み現場が複数赤字になると会社全体が赤字になるという流れができてしまっています。

利益を確保できないため有能な従業員の確保もできず、品質や安全性を保つことさえ危うくなってしまうのです。

今後、建設業界で考えなければならないのはリ―マンショック後にだんだんと景気が回復してきたからと安心するのではなく、どうすれば利益を生み有能な人材を確保することができるか、人手不足解消に向けた取り組みといえるでしょう。