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建設業界が抱える重層下請け構造による問題とは?

2019.09.16
分類:経営

建設業は日本社会を支える業界ですが、東京オリンピックによって需要が高まり、景気回復も手伝い空前の好業績という状況です。

しかし、建設業界では重層下請け構造に労働者の高齢化、人材不足など色々な問題を抱えている状態で、いくら需要が高まってもそれらの課題は解決に至っていません。

特に重層下請け構造については、取引先が倒産してしまうと連鎖倒産を引き起こすなど色々なリスクが懸念されていますが、そもそもなぜこのような請負形態になっているのでしょうか。

なぜ建設業界は重層下請け構造?

大手ゼネコンなどは、かつては自社で技能者を雇用することを行っていたようですが、現在では外注に委託するといった下請けへの外注化が一般的です。

その背景には技術が専門化されたことにあり、専門職や技術に特化した業者が増えたことが理由といえるでしょう。

建設工事は継続的な取引ではなく、施主が1つの工事を発注することで仕事が開始されます。

そこで、できるかぎり正社員の数を抑え、事業量によって外注でカバーするといった形が取られたことにより、重層下請け構造が広がり今に至るという流れです。

 

なかなか元請けになれない下請けの事情

1つの工事現場には様々な業者や職人が出入りすることになります。これは重層下請け構造によるものですが、仕事の依頼を受けるためには業者規模に関係なく、営業活動を行い維持するためのコストをかけてのことです。

そのような中でも、民間工事の場合、手付金10%、中間金10%、竣工後80%という支払い条件ならまだしも、手付金も中間金もない上に引き渡しから半年後といった支払い条件で事業を継続させなければならないこともあるのです。

元請けなら資金力があるから耐えることができても、下請けでは運転資金がもたなくなってしまいます。そのため、せっかく技術力はあるのに、いつまでたっても元請けになれず、資金面での体力が弱いほど、孫請けやひ孫請けなど下位層に落ちてしまうのです。

 

国も重層下請け構造を改善させるための動きを見せ始めた!

このような問題を国も重くみたのか、ついに国土交通省も重層下請け構造の改善に向けた取り組みを進めるようになりました。

繁忙期などにおいても重層化が過度に起きないように、下請け企業の主任技術者の配置要件を合理化させるというものです。

上位下請けの主任技術者が下位下請けの主任技術者が行う業務もカバーすることによって、下位下請けの主任技術者は配置しなくてもよい形にするという内容です。

1つの工事に関係する下請けの数だけ必要だった主任技術者が不要となり、上位下請けの主任技術者のみでよいことになります。

それによって、作業間の連絡や調整がしにくいという問題や、責任の所在が不明確となるなどの問題も解消されやすくなるといえるでしょう。

生産性向上や技術者の働き方改革にもつながると考えられますので、今後も重層下請け構造が解消される制度の整備などが期待されるところです。