建設業は資金繰りが難しい業種といわれるのは、特有ともいえる重層下請け構造が関係しています。
元請けから下請け、下請けから孫請けというように、下位層になるほど入金が遅くなり、いくら受注しても資金が回りにくくなってしまいます。
特に年度末など工事が集中する時期ですが、様々な必要経費の支払いが困難となり工事を進めることも難しくなり、倒産してしまうというケースもあるようです。
一般的な業種の場合、売上と計上された諸費用が表示された損益計算書を毎月確認すれば、おおむねの収支と必要資金は把握できるでしょう。
しかし建設業は、工事を受注しその進捗を毎月算定しながら、毎月の売上(完成工事高)と諸費用(完成工事原価)を計上しなければなりません。
工事の進捗状況の見極めが正しく行われなければ、損益計算書でおおよその収支の把握は難しくなってしまいます。
この建設業の会計制度は少々特殊であるため、他業種より資金繰りが悪化しやすい状況を作ってしまうといえるでしょう。
その一方、工事の進捗を算定し、着手金や中間金などを工期中であっても元請などに出来高として請求できていることもあります。
仮に請求額が多かったとしても、売上(完成工事高)に適切な形で反映されず、未成工事受入金として貸借対照表に計上されることになります。その後、工事が終わった段階で完成工事高に振り替えられる形です。
ということは、実際の請求や入金のタイミングと、売上の計上時期が違うということを意味します。
建設業は現場を終わらせなければ入金がされない労働集約型産業であることが特徴ですが、外注として働いてもらった職人に対する人件費は先払いになってしまいます。
材料費なども同様ですが、経費も工事が終わるまでは損益計算書に計上されません。一旦は未成工事支出金となり、貸借対照表に計上されます。
建設業は損益計算書だけで収支を把握することは困難ですが、未成工事受入金や未成工事支出金など貸借対照表に計上される支払い分も含めた資金繰り表を作成し管理を行うことで把握できるようになります。
実際のお金の流出入を現場単位で把握できるように、一覧で表示しておけば問題ありません。お金の出入りをつかんでおくことで、資金ショートを防ぐことも可能となるはずです。