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建設業法による元請けから下請けへの発注で遵守しなければならないこと

2021.05.12
分類:経営

元請けとは発注者から直接仕事を請け負うことですが、元請けに対し下請けとは、元請けが引き受けた仕事の全部または一部をさらに請け負うことです。

元請けと下請けの違いは誰から仕事を請け負っているかですが、建設業界では元請けから下請け、さらに下請けから孫請けへと仕事が発注される重層下請構造が基本となっています。

しかし元請けのほうが下請けよりも立場が強いことが多く、その優位性を利用して不利な契約を持ち掛けることがあるようですが、そのような行為は禁止されています。

元請けから下請けへの発注で守らなければならないこととは

建設業法では、元請けから下請けに対し仕事を発注する際に、トラブルを未然に防ぐため次の項目を守ることを必要としています。

見積条件は必ず具体的な内容を提示すること

見積もりは、下請契約の具体的な内容を提示することを必要としています。

元請けは下請契約を締結するよりも前に、建設業法第19条で請負契約書に記載することを義務付けている事項の中で、請負代金の額を除くすべての事項の具体的内容を下請けに提示しなければなりません。

不明確な見積内容を提示することや、曖昧な内容の条件で下請けに見積もりを提示される行為は建設業法違反となる可能性があります。

また、予定価格の額に応じた一定の見積期間を設けることも必要です。

元請けから急いで見積もりを提示してほしいといわれても、下請けに対して契約内容が提示されてから契約締結までの間は、下請けが見積もりを行う一定期間を設けなければあらないと建設業法施行令第6条で規定されています。

やむを得ない事情がある場合には、次の②③の期間は5日以内に限って短縮が可能です。

①工事1件の予定価格が500万円に満たない工事については、1日以上

②工事1件の予定価格が500万円以上5,000万円に満たない工事については、10日以上

③工事1件の予定価格が5,000万円以上の工事については、15日以上

必ず書面で契約を締結すること

契約は下請け工事を着工するよりも前に、書面で行うことが必要とされています。

契約において必須とされている14事項を記載し、署名(または記名)・押印をし、元請けと下請けそれぞれに交付しなければなりません。

工事着工後に契約書を交わすと建設業法違反となります。

さらに建設工事標準下請契約約款またはこれに準拠した内容の契約書で契約を結ぶことが必要です。契約書面に記載が必要な14事項については、建設業法第19条第1項に定められています。

契約書ではなく注文書・請書で契約を結ぶ場合にも一定要件を満たすことが必要となっています。

片務的な内容による契約は建設業法上不適当とされていますし、一定規模以上の解体工事などは契約書面に追記しなければならない事項もあるため事前に確認しておくようにしましょう。