建設現場の従業員の中に、たとえばトラブルを頻繁に起こす人物などがいる場合、減給など制裁を加えることを検討することもあるでしょう。
ただ減給する際には決められた上限を守ることが必要であり、限度額を超えた減給は違法と見なされ対象の従業員とのトラブルになりがちです。
そのため関連する法律や就業規則など含めて正しい対処が必要となりますが、減給する際の上限額や、労働基準法による規定と計算方法について解説していきます。
減給とは、懲戒処分の1つであり、給与から一定額を差し引くことです。
会社は従業員に雇用契約で定められた給与を全額支払うことが義務づけられていますが、従業員の不祥事や職務上違反、会社の経営悪化などを理由として労働契約が変更されれば減給されることもあります。
減給する際、一度に減給できる上限が労働基準法で定められています。
減給可能とする金額は、1回の減給限度額と、1回の賃金支払い期における制限の2つに注意が必要です。
労働基準法では、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払い期の賃金総額の10分の1を超えてはならないとしています。
そのため1回で減給できる上限は、
1回当たりの減給上限額=平均賃金×1/2
となります。
賃金カットとは、労働者が勤務しなければならない時間に仕事をしなかったときに給与から一定額を差し引くことです。
従業員が働いていない分まで賃金を支払う義務はないため、遅刻で予定勤務時間分の労働ができなかったときや欠勤した場合には、賃金カットの対象になると考えられます。
減給は懲戒処分の一種であり、規律違反や不祥事発覚において賃金から一定額を減額することであるのに対し、賃金カットは遅刻や欠勤など業務に従事していない分の賃金相当額を差し引くという違いがあります。
1度の規律違反や問題行動について減給できるのは1回の賃金支払い期のみです。
ほとんどの企業が1か月に1回給与を支払うため、1か月分の給与に適用された減給処分を翌月まで持ち越すことはないといえます。
仮に7月分の給料で減給とした場合、同じ懲戒処分で8月以降も減給という対応はできないことを意味します。
会社役員であれば、役員報酬を6か月間10%カットなど数か月単位での減給が可能ですが、これは役員が労働基準法の適用外だからです。
一般の従業員では同じ減給はできないため間違わないように注意してください。