建築工事の施工にミスがあったときに、施工業者に責任が発生するだけでなく、ミスを見逃した監理者も責任を負わなければならないことがあります。
監理者の責任については監理業務の注意義務により決定されますが、責任が認められれば施工者の責任との関係も問題になります。
そこで、建築工事に施工ミスがあった場合の、監理者の注意義務とその責任、監理者と施工者の責任関係について説明していきます。
建築工事の監理業務について、国土交通省も告示やガイドラインに記載しています。
もし施工ミスがあったときに監理者が責任を負うことになるかについては、監理者の注意義務の内容により決まると考えられます。
監理業務の義務とは、施工者が設計図書どおり施工しているか注意を払うことであり、施工者は設計図書よりも簡略化した手抜き工事をするおそれがあることを踏まえ、確認や不備の是正を求める法的義務を負っています。
監理とは、設計図どおりに建築工事が進み、手抜き工事のないように指導・監督することです。
監理が不十分であれば、施工者が設計図どおりに施工せず、手抜き工事してしまうリスクを高めます。
また、自己の責任で工事を設計図書と照合しながら、設計図書どおりの工事ができていないと判断するとき、施工者に注意と是正を求める措置を講ずるべきとされています。
監理者は専門的知識と経験に基づいた適切な指導・監督を行うことが義務付けられているため、施工ミスが発覚したのに是正措置を取らなかったと判断されれば、監理者に責任があると認められてしまうでしょう。
監理者が施工ミスの責任を負うことになった場合、その責任の種類や監理契約の法的性質が問題になることもあります。
施工者は、監理者が工事を是正してくれればミスに至らなかったと主張したいでしょうが、施工内容は施工者が判断することであり、是正されなくてもミスは許されることではありません。
そのため監理不備を理由として施工者の責任が免除されるわけではなく、施工ミスがあれば監理者と施工者のどちらも責任を負うことになると考えられます。
監理者と施工者の責任の関係は不真正連帯債務となり、施主に対しそれぞれが全額賠償責任を負うことになります。
実務的には、監理者が全額賠償金を支払った後に、監理者から施工者に責任割合に応じた金額を求償することになるでしょう。