工事を一時中断または一時中止することは、工事請負契約書に記載された発注者の権利といえます。
受注者の責任に帰さない理由による施工不能の場合には、発注者が現場を止めることができますが、たとえば用地買収・申請協議の遅れ・自然災害発生などがその例です。
発注者の落ち度により工事を中断しなければならなくなっても、受注者は黙って受け入れるしかないのが従来の姿だったといえますが、コロナ禍による工事中断で仕事を失った一人親方なども少なくありません。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、工事が中断してしまい仕事を失った一人親方などは、書面による契約すらなく救済を求めること自体が困難な状況に追い込まれたといえます。
一人親方の場合、仕事のある期間は現場に入って、現場がなくなればまた他の現場へと移動するケースもあります。
しかし専属として働く一人親方などの場合、現場の作業が中断されれば、たちまち収入が途絶えてしまい生活は困窮することになるでしょう。
今回のようにコロナ禍で工事が一斉に中断してしまうと、他の現場へ移動する一人親方もやはり収入がなくなってしまいます。
緊急事態宣言でスーパーゼネコンや準大手ゼネコンの現場は一気に停止したのに、一人親方などの休業補償を認められないのは、現場を支える大切な人材の将来を途絶えさせることともいえるでしょう。
請負で働く一人親方などの中には、政府の救済から抜け落ちてしまっている方も少なくないですが、雇用保険を活用した給付金も雇用関係にある労働者が対象です。
一部のゼネコンで休業補償を明確に示したケースもありますが、契約書面のない一人親方まで対象になったか不透明であり、補償を切実に求める声が大きかったといえます。
新型コロナウイルス感染拡大による建設工事の一斉中断などは、予想もしていなかった事態であり、一人親方などの救済や配慮が不十分であることを浮き彫りにしたといえるでしょう。
建設現場の仕事は限定的であり、ずっと現場を綱渡りのように移動できるとも限らないため、一人親方の生活を守るためにも補償や制度の拡充が求められます。
建設現場を支えているのは、現場で求められる技術や経験のある一人親方であることを忘れず、今回のような一斉中断があったときにも救済できる措置を設けておくことが必要といえるでしょう。