建設業で発生する労働災害は減少傾向を維持しているとされており、特に死亡災害は減少の傾向が顕著にあらわれています。
しかし、いくら減少しているからといっても災害のリスクは高いままであり、すべての産業の死亡災害の3分の1以上を占める状況に変わりはありません。
建設工事などで災害が発生してしまう原因を確認すると、たとえば開口部に手すりが設けられていないなど、労働災害を防ぐ基本といえる措置が講じられていない例もあります。
建設業は重層請負構造となっていることで、次のような特性があると考えられます。そのため、次に挙げる性質を踏まえた上で労働災害を防ぐ対策を講じていくことが必要です。
・建設現場が短期間で変化することや、著しく広さのある場所や狭隘な場所、日中の作業が制限される場所など、慣れない現場環境で作業を行うこともある
・ 個別の受注生産となるため、同じ種類の建設現場であっても生産条件が異なり、それぞれの物件に応じた作業を習熟することが必要である
・同一の場所で異なる事業者の作業員と作業を行うため、自社の作業員には安全対策を講じていたとしてももらい事故が発生する可能性がある
・元請が現場によって変わるためコミュニケーションが不足しがち
・元請により施工法や生産体制に特徴があるなど、短期間で理解が難しいケースがある
・他の事業者が設置した機械や設備を使うことになるので、災害防止対策のための手直しが難しい
・設置される機械や設備は事業者によって保守や管理に差がある
以上のことから、労働安全衛生法では元請による統括安全衛生管理を規定しており、現場では元請が統括管理を実施し、関係請負人など安全衛生責任体制を確立することを基本としています。
そして事業者が行う必要な措置や、職場における危険・有害性の有無の調査、それによるリスクアセスメントを求めており、どのように進めればよいか厚生労働省でもその指針が示されています。
事業者とは労働者を使用するものを指すので、事業主個人、法人なら法人そのもののことです。労働者に対して報酬を支払うだけでなく、それぞれの安全と健康を確保し安心して働くことができる職場環境を整備することが必要とされています。
作業を行う前に、災害の原因となる危険・有害性は取り除いておくための基本的な枠組みを定めることこそがリスクアセスメントといえるでしょう。
リスクアセスメントは作業計画のときに時間をかけて行い、作業を進める段取りや手配などを決める段階で支障が発生しないよう、設備や配置などの問題も解決しておくようにしてください。