住宅建築における契約などは、民法で請負契約に分類されることになります。この請負契約は口頭で合意することも可能ですが、注文住宅を請け負う場合には注文主と建築業者で建築工事請負契約書を作成・締結することが一般的です。
この建築工事請負契約書には、工事に着手する時期だけでなく完成時期も記載しなければならないことが建設業法で定められています。
そのため工事の完成時期までに引き渡しできない理由が建築業者の責任による遅延である場合、債務不履行となるため損害賠償を請求させることになるでしょう。
現在建築業界は人手不足の状態です。ただ、人手不足ということは建築業者側の責任となる可能性が高いため、工期を過ぎていれば賠償責任を負わなければならないと認識しておくべきです。
契約書の中に、必要と認められるときには工期を延長の請求を可能とする内容が組み込まれているのならこの限りではありません。ただし、どのような工期の延長でも可能というわけではなく、あくまでも必要と認められるときです。
たとえば地震や豪雨災害など天災による場合とすることが一般的なので、人手や資金不足による遅延など一方的な理由で工期を延長してもらえるわけではないと理解しておきましょう。
なお、注文主からの指示で設計や仕様に変更があったときや、追加工事などが発生したことによる遅延の場合も、建築業者の側の債務不履行にはならないと考えられるので損害賠償責任を追及されることはないと考えられます。
注文主が工期の遅延を理由に請負契約を解除したいと伝えてきたとき、建築業者側の債務不履行が理由であれば法的には可能となるでしょう。
そうなると行ってきた工事は中止となり、すでに完成させているところまで取り壊しすることになります。ただ、その場合には注文主側が経済的に損をすることになるので、未完成部分だけの一部解除を請求されることになるでしょう。
そのため、すでに完了している部分の出来高を査定し、仮に完成部分に未払いがあれば違約金を差し引いた差額を注文主から支払ってもらう流れになります。
さらに新しい建築業者と引き継ぎなど行うことになるため、この部分がうまくいかなければ完成はさらに遅れてしまうことになるので、注文主にとって得策とはいえない方法なのです。
これらのことから実務上は、違約部分を未払分の代金から値引きをするといった対応で合意してもらうこととなるでしょう。