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大工工事などで発症することが多い腱鞘炎は労災認定の対象となる?

2020.05.23
分類:リスク

内装大工の職人の方などは、過度な負担が手にかかり腱鞘炎になってしまうこともあるようです。

ただ、このような場合には腱鞘炎が労災として認定されるのか気になるところでしょう。実際、腱鞘炎などの上肢障害が労災として認定されるには、仕事で腕や肩、手などを酷使したことが原因であると認められることが必要です。

腱鞘炎が労災認定されるために必要なこと

上肢障害として挙げられるのは腱鞘炎をはじめとして、手関節炎、手根管症候群、回外(内)筋症候群などがあります。

腱鞘炎など上肢障害が労災と認定されるには、

・上肢などに負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後、発症したものであること

・発症前に過重な業務に就労したこと

・過重な業務への就労と発症までの経過が、医学上妥当なものと認められること

という要件すべてを満たすことが必要です。

上肢等とは、頸部、後頭部、肩甲帯、上腕、前腕、手、指をさし、この上肢などに負担のかかる作業とは、建設工事現場で考えられるのは主に次の作業です。

・上肢の反復動作の多い作業(荷物の運搬や積み降ろしなど)

・上肢を上げた状態で行う作業(電気設備・空調設備工事などの作業や、塗装・溶接作業など)

・頸部や肩の動きが少ない状態で姿勢が拘束される作業

・上肢等の特定部位に負担がかかる状態や姿勢で行う作業

 

相当期間とはどのくらいの期間?

相当期間とは原則、6か月程度以上を指しています。ただ、腱鞘炎などは短期間でも発症する可能性があるので、6か月より短い場合でも労災認定されることはあるようです。

さらに過重な業務とは、

・同一事業場で同種の労働者と比較したとき10%以上業務量が増加しており、その状態が発症直前3か月程度に渡る場合

・業務量は一定せず1か月の平均では通常の範囲内でも、

1日の業務量が通常の業務量の20%以上増加しており、その状態が1か月に10日程度認められる場合

1日の労働時間の3分の1程度に渡り業務量が通常の業務量の20%以上増加しており、その状態が1か月で10日程度認められる場合

のいずれかに該当する状態が発症直前3か月程度継続している場合

のどちらかに該当するケースです。

さらに過重な業務か判断するときには、上記の業務量だけでなく状況も考慮されることになります。

 

企業側が気をつけなければならないこと

1人だけ作業量が多い場合や、繁忙期のため通常の時期より作業量が増えた場合などにおいて、そのことが理由で腱鞘炎になったことを数字で根拠として示すことができれば労災として認定される可能性が高いということです。

企業側は労災などが起きないためにも、作業量などの配慮が必要となるでしょう。