建設工事業情報ラボConstruction Business Information Lab

危険を伴う作業が多い工事現場の死亡災害は本当に減少しているのか

2022.04.14
分類:リスク

建設業は、他業種と比較すると死亡災害が多く発生しているといえますが、工事現場の作業はそれだけ危険を伴うことを意味します。

建設業労働者数の比率をみると、全産業の約1割といえますが、死亡災害の比率35%はかなり高いといえます。

建設業全体を年ごとにみたときには、死亡事故数は年々減少傾向にあるようですが、墜落を原因とする死亡災害は毎年40%前後と高い割合です。

そこで、建設工事現場で死亡災害は現在どのような推移をたどっているのか、現状について確認しておきましょう。

2020年の建設業での労災発生状況は?

厚生労働省の公表している「2020年 労働災害発生状況(確定値)」を見ると、建設業の死亡災害は3年連続減少しています。

さらに休業4日以上の死傷災害も、2年連続減少という結果でした。

労災が多く発生しているというイメージが高い建設業ですが、死亡災害や休業4日いじょうの死傷災害が減少しているのなら、問題ないと考えてしまう方もいることでしょう。

しかし実際には、たとえば夏季に感電リスクが高くなるなど、死亡災害が多く見られる低圧を扱う作業には注意しなければなりません。

暑さが増す時期に屋外で作業すれば発汗も増え、感電による死亡・死傷災害が多くなるからです。

いつ災害が起きるかわからないと、引き続き危機意識を高めた上で作業を行うように、作業員にしっかり周知することが必要です。

死亡災害・死傷災害どちらも墜落・転落が最多

建設工事の現場で起きた死亡災害と死傷災害は、どちらも「墜落・転落」によるものが最多となっています。

全体の3割強を占めており、長期的に見れば減少傾向にあっても、死傷者数では「転倒」が近年増加傾向になっていることは忘れてはいけないといえます。

厚生労働省でも、建設工事現場での「墜落・転落」による労働災害を防ぐために、引き続き墜落・転落災害防止に係る労働安全衛生規則の順守すること、フルハーネス型墜落制止用器具を適切に使用することを徹底するように図っていく姿勢です。

また、はしごや脚立を使うときには、事前に確認しておくことが必要な事項をまとめておき、チェックリストとして活用するといった対策も必要となるでしょう。

すべての職種の労働災害での死亡者数は3年連続過去最少でしたが、死傷者数は前年の減少から増加へ転じています。

新型コロナウイルス感染症の罹患による労働災害発生状況を見たときには、死傷者数は全業種6041人に対し、建設業は187人となっており、この件数を多いとみるのか少ないとみるのかで危機意識は変わってくると考えられます。