災害復旧工事を支えているのが、遠隔操作による現場の無人化施工です。
日本の建設工事の無人化は、主に建機の遠隔操縦による施工といえますが、火山災害に土砂崩れなど物理的に人が立ち入ることのできない場所や二次災害の恐れのある場所での無人化といえます。
遠隔操縦で行う無人化施工は、建設機械の自律運転に先駆けて20年に渡り、災害復旧工事を支えてきました。
最新技術を建設工事現場に用いる省人化にも注目が集まっていますが、これからは無人化から自動化に変化を遂げていくことのなるのでしょうか。
日本の無人化施工は、1990年代に長崎県の雲仙普賢岳噴火災害の災害復旧工事を皮切りとして発展し始めました。
建設業界で「無人化施工」として定着しているのは、人体に危険度の高い施工地で無線技術を活用し、安全な位置から建機を操作する方法です。
災害が発生した直後の土石除去や二次災害防止の処置など、本格的な人員・建機立入りへとつながるための搬入路・ヤード確保など、緊急性の高いもので用いられます。
無人化施工で遠隔操作システムを構成しているのは、操作命令を受信・実行する機構が搭載された建設機械と、操作盤・現地施工状況を目視するモニターが集約された遠隔操作室です。
施工個所の付近で人が立ち入ることのできない状況を前提にした手法のため、建機と操作室はある程度距離を取ることが一般的といえますが、2つは無線によって結ばれます。
施工地から100~300メートル、長いと1キロ程度離れた場所へ操作室を設置し、モニター越しで建機を遠隔操作していきます。
無人化施工は全国約200件の事例があり、除石工事を対象としていた当初から、現在では対応工種を拡大し、撤去工・砂防堰堤構築工・導流堤ブロック積工などいろいろな工種に適用することができます。
建設工事の無人化は、IT・AI・ICT・IoTを活用した自律運転の領域が注目されるようになり、実証実験や試験導入も進んでいます。
確かにAI技術も無人化施工に実装でき、ドローンを使った測量技術では無人化施工でデータを得ることができます。
自律運転と遠隔操作は異なる技術ととらえられがちですが、実は同じものであり、遠隔操作と自律運転のどちらの信号も中身は同じです。
人が考えて信号を出すのか、コンピューターが考え信号を出しているかという違いはあります。
いずれにしても安全・迅速な災害復旧を担うのは、人の手による遠隔操縦技術といえるでしょう。