リニア中央新幹線の建設工事を巡って、大手ゼネコン4社による入札談合事件。鹿島と大成建設の独占禁止法違反を問う裁判の証言台に立ったのは、無罪を主張する鹿島と大成建設、そしてすでに罪を認めている大林組と清水建設、さらに発注者であるJR東海などです。そして裁判では、それ以外の工事に話題が及ぶこととなり、前田建設工業、安藤ハザマ、熊谷組など他のゼネコンに対する証言まで飛び出すという状況となっています。
9兆円にのぼるリニア新幹線に関連する工事契約の談合ですが、そもそも談合とは企業同士の話し合いを指すはずなのに、何が問題なのでしょう。
談合とは、単なる企業同士の話し合いではなく、結託して公共事業の入札をデキレースに変えてしまうことです。公共事業が対象となるため、税金の無駄遣いにつながることが大きな問題といえます。
多くの公共事業で採用される入札制度は、自治体などが事前に定めている予定価格を上限とし、複数の企業に請け負う金額を提示させ、もっとも低い金額で提示をした企業に対し発注がされます。
企業同士が何とか受注しようと、できる範囲までに金額を抑えようと競争心を働かすことにより、公共事業を低く抑えることができれば無駄な税金も発生しないというメリットがあります。
しかし誰でも参加が可能な一般競争入札制度の場合、技術力に疑いのある業者が破格値をつけて落札しようとする可能性もあるため、自治体が選定した高い技術力の企業数社で入札してもらう指名競争入札制度も採用されます。
今回の談合事件は、この指名競争入札制度で選ばれた企業同士が結託して行ったものとされています。
企業同士が持ち回りにより公共事業を引き受けることができるよう、事前に話し合いを行って入札する際の金額を調整したのです。
事前にどの企業が担当するのか決めておけば、それぞれの企業が上限ギリギリの金額で入札し、高い金額で特定の企業に落札させることが可能となります。
2005年に談合を防ぐために独占禁止法が改正となり、課徴金減免制度が導入されたことで公正取引委員会が調査を開始する前に談合を認めれば、課徴金が免除や減額されることになりました。
最初に申告すれば課徴金は免除となり、次に申告すれば半分減額、3番目からの3社は30%減免されます。
今回の談合事件においては、課徴金数十億円を恐れた大林組が自ら最初に申告をしたことで公になりました。
ゼネコン全体には、談合をしなければしわ寄せが下請けや孫請け業者に及んでしまうので、事前に談合をして公共事業の質を高めたほうがよいという考えがあるようです。
それだけでなく、発注する官公庁側にも談合をわかっていながら黙認する代わりに、ゼネコン側に天下り先としてのポストを求める背景も関係しています。
実際、2017年の震災関連事業の談合疑惑事件においては、ゼネコンなど31社の約半数に農林水産省から天下りしたOBが在籍しているがわかっています。
建設業界の談合の問題は根深いものであり、根絶するまでの道のりは長いといえるでしょう。