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建設事業を取り巻く物価の影響とは?建築費の推移

2016.07.29
分類:その他

一般財団法人建設物価調査会による建築費指数によると、2015年に入って建築資材の価格上昇が落ち着いていることや、建設技能労働者が不足も足元では解消しているといったことが要因となって建築費の上昇基調は一服している状況です。

 

 

建築資材価格が横ばいの理由

 一般財団法人経済調査会による建設資材価格指数によると、2012年末頃から主要都市の建築資材価格は上昇しました。その要因として、この時期に景気がある程度回復したこと、消費税増税前の駆け込み需要が高まったこと、大型補正予算による建設投資の増加、東日本大震災の復旧や復興工事、円安による輸入資材価格の上昇などがあげられます。しかし2014年になると、消費税増税前の駆け込み需要の反動や、震災復旧と復興工事が進んだことで建設投資の増加基調が落ち着いたこと、原油価格の急落など、様々なことが背景となって建築資材価格は横ばいで推移している状況です。

建設技能労働者の不足は解消?

 建設労働者にとって労務単価は労働需給に影響を与えます。国土交通省の実施した建設労働需給調査によると、2011年後半から建設技能労働者が不足している状況です。東日本大震災の復旧や復興工事の際には鉄筋工や型わく工の技能を持つ労働者が不足していることが顕在化したことや、2013年以降民間・公共の建設投資が増加したことが要因でしょう。先にも述べたとおり、2014年以降は建設投資の増加基調が落ち着いたため主要都市の建設技能労働者が過度に不足していた状況は解消しているといえるでしょう。

東京五輪などが影響

 しばらくは建築資材、建設労働者の需給が緩和される傾向になって建築費の上昇圧力は低下していくと考えられます。長期的には民間投資は資金調達環境と景気動向をベースとして、2020年に開催される東京五輪に向けてホテルや商業施設を建設したりリニューアルするといったことが行われていますし、これからも増えていくことが予想されます。政府投資は東京五輪の競技会場建設、道路や鉄道といったインフラ整備、リニア中央新幹線建設といった大型事業の実施によって建築資材や建設労働者の需給に影響があると考えられます。様々なか所で建設に対するニーズは高まっている状況です。

今後建築費はどうなる?

 建築資材価格は為替や原油価格の動向に影響を与えると考えられます。建設技能労働者不足は、バブル崩壊以降に公共事業が縮小されたことや景気低迷で民間建設工事が減少したこと、労務単価が下落したことで、新規入職者が減少している傾向です。しかし現職者の高齢化などから長期的には労務単価は上昇し、建設業者の受注選別が強まる可能性も考えられます。建設業を取り巻く様々なものの価格が変動していくでしょう。