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建設業は厚生年金に加入しないと現場入場させられない?

2017.04.28
分類:その他

従業員に資格があっても事業所が厚生年金に加入させていないといった「加入逃れ」が存在する事業所があります。
個人事業所であっても、従業員を5人以上雇用していれば厚生年金に加入する義務があります。
しかし建設業者の中には、従業員として作業員を雇用しているのに一人親方として仕事を外注しているといった実態も存在しています。
国民年金は全額自己負担ですが、厚生年金になれば事業所も保険料を折半で負担することになるため、費用の負担を避ける狙いで加入逃れが行われていると考えられます。


加入義務がなくても加入の必要がある?
建設現場で今後現場に入れないと言われたというケースや、一人親方が社会保険に加入するように言われたというような混乱が起きています。
元請企業が間違った理解をしていると、下請が現場から排除されることになってしまい、倒産や廃業の危機に陥る可能性があります。
そのため誰がどの保険に加入する必要があるのか、適切な保険について理解しておくようにしましょう。


適切な保険はどの保険かの確認を
国土交通省が平成24年11月に施行したガイドラインでは、建設業においての社会保険の加入促進への取り組みとして平成29年度以降に適切な保険に未加入の作業員について、特段の理由がなければ現場入場を認めない取り扱いにすべきとしていました。
ただし適切な保険については、人を雇っている企業である法人、そして個人事業主といった違い、さらには規模で異なります。加入義務がある保険に対しての加入を求めているため、加入義務がない保険にまで加入することは求められていません。


建設業違反の契約にならないように
元請が一方的に工事費を削減するといった実質的に法定福利費が賄えない金額で契約を締結すれば建設業法違反になる恐れがあります。社会保険料を支払うことができない単価で契約すると建設業法違反の恐れがあるということです。
従来の単価に法定福利費が含まれているといった工事単価を引き下げ社会保険料は別枠で表示させるという対応は法律違反になる可能性がありますので、国でも単価に法定福利費を上乗せすることの指導強化が今後必要になると考えられています。


適切な保険への加入が必要
厚生年金は会社員や公務員など、約4千万人が加入する公的年金です。加入できるのに未加入である人は約200万人存在するとも言われていますので、今後は中小や零細企業を中心とした保険料負担を逃れていると考えられる事業所に対して調査がいっそう厳しくなることも考えられます。
未加入のままでは、将来低年金や無年金といった老後の貧困リスクに直面することになり、生活保護の利用者が増えれば社会的コストも増大してしまうでしょう。
ただし一人親方なのに社会保険に加入することを強制する必要はありませんので、適切な保険に対して加入が必要だということを理解しておきましょう。