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建設業における見積書に明示する法定福利費の計算方法とは

2018.01.27
分類:その他

国が建設業の社会保険未加入対策を行うにあたり、法定福利費を内訳明示した見積書を提出することが平成25年9月から始まっています。
社会保険料などをはじめとする法定福利費を、適正に負担している企業とそうでない企業を比べた時、適正に負担しない企業のほうが市場競争で有利に働くという矛盾を是正するためです。
そこで見積書に法定福利費の内訳を明示はどのように行えば良いのか、確認しておきましょう。


見積書に明示する法定福利費とは
見積書の内訳明示の対象である法定福利費は、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の中でも現場労働者の事業主負担分のみです。

●法定福利費の計算方法
一般的には、労務費(直接工事に従事する現場作業員の給与支給額の合計)に、社会保険料率を掛けて計算します。
「法定福利費=労務費×社会保険料率」

・労務費率
見積時に労務費の算定が難しいという場合には、請負金額に労災保険の労務費率を掛けて計算した額にする方法もあります。
労務費率は、例えば事業の種類が道路新設事業なら労務費率は20%、舗装工事業は18%、建築事業(既設建築物設備工事業を除く)は23%などです。厚生労働省のWebサイトを参考にすると良いでしょう。

・健康保険料率、介護保険料率
健康保険及び介護保険の保険料率は、加入している協会けんぽ(全国健康保険協会)や健康保険組合の保険料率を使います。
介護保険は40~64歳までが対象ですので、現場労働者でその年齢の人の割合を把握することが必要ですが、実務上は困難だと言えるでしょう。
そのため被保険者全体に占める40~64歳の被保険者割合(協会けんぽのデータなど利用)を算出して見積もる方法を用います。
「見積書の介護保険料率=介護保険料率×1/2(事業主負担分)×40~64歳の被保険者割合」
なお、協会けんぽでは、事業年報で「被保険者及び被扶養者の年齢構成割合」が公表されていますので、被保険者全体に占める40~64歳の被保険者割合を算出することが可能ですので活用すると良いでしょう。

・厚生年金保険料率
厚生年金保険の保険料率は、日本年金機構のWebサイトに載っている保険料額表を参照にしましょう。

・雇用保険料率
雇用保険料率は事業の種類ごとに、事業主と労働者が負担する分の保険料率が定められています。厚生労働省のWebサイトから閲覧することが出来ますので、建設の事業の保険料を参考にしてください。


法定福利費を計算する時の注意
下請企業ごとに詳細な法定福利費を算出するというよりは、人工や歩掛りを用いた算出方法で出した金額に保険料率を掛ける、または工事費に平均的な労務費率を掛けて計算するという方法が取られます。
見積書ごとに計算方法が違ってくる場合もあるでしょうから、事前に元請企業と調整することも必要だと言えるでしょう。