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建設業が考えなければならない安全衛生経費とは?

2018.11.27
分類:その他
建設業界において、労働災害の死傷者数は減少傾向にあると言われていますが、全ての産業の割合からみれば高い数値であるので、さらなる改善が求められていると言えます。 現場で実際に作業する方たちが、それぞれ高い安全意識を持った上で作業や取り組みを行うことが重要です。 しかし、厚生労働省と国交省、建設業労働災害防止協会などが公表しているデータを確認すると、安全衛生経費の確保がまだまだ十分ではないことが確認できます。 ではこの安全衛生経費とはどのような費用なのでしょう。

安全衛生経費とは?

安全衛生経費は建設工事の労働災害防止対策、また、安全衛生確保において捻出される費用です。 労働安全衛生法では、元請負人および下請負人に労働災害防止対策を義務つけているので、発生する経費は元請負人が負担することになります。 通常必要だと認められる原価に含まれるので、建設工事請負契約はこの経費分も含めた上で結ぶことになります。 本来は元請業者が労働災害防止対策にかかる経費を負担することになってはいるものの、建設投資が減少してきたことで建設工事価格も低下している状況です。

なぜ安全衛生経費を確保できなくなっている?

公共工事の場合、安全衛生経費は直接工事費や共通仮設費に含まれているので、受注額が低下するということは安全衛生経費も低下することに繋がります。 民間工事では安全衛生経費を誰が負担しているのか曖昧な部分もあるため、安全衛生経費は工事価格とは別枠で計上し、労働災害防止対策の実施者と経費の負担者を明確化することが求められています。 誰が負担したのか明確でない上に、請負代金の低さから下請け業者も安全衛生経費を確保できない状態が続いています。 このような中で、建設工事の安全衛生経費の実態把握、さらに適切で明確な積算を行い下請負人まで確実に支払われるために2017年3月には「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」が施行されました。

国が公表しているガイドラインの確認を

厚生労働省と国土交通省が公表しているガイドラインでは、元請負人は見積条件を提示する時、労働災害防止対策の実施者と経費負担者の区分を明確化することが示されています。 さらに、下請負人は労働災害防止対策に要する経費を元請負人に提示する見積書に明示する必要があります。 また、元請負人と下請負人が対等な立場で契約交渉をすることなどもガイドラインの中に示されていますので、一度確認しておくようにしましょう。