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建設業者の原価管理における労務費とは?

2019.05.21
分類:その他
建設業界ではその他の業種ではあまり耳にしないような用語が使用されることがあります。そのうちの1つに、会計用語である「労務費」や「労務比率」などがありますが、頻繁に使用する言葉でもあります。 そこで、建設業者の原価管理においての労務費とは、いったい何を指しているのか、どのような意味を持つのか確認しておきましょう。

労務費とは?

労務費とは、かかった費用のうち、人材を雇用することで生じた費用を指します。工事などでは製造原価の中で、労働力を消費したことで発生した原価の部分なので、作業賃と考えてよいでしょう。

労務費率とは

労務費率とは、建設業者などで労災保険料を計算する際に使用する値で、請負金額に対しての賃金総額の割合を示します。 一般的には労災保険料を計算する時、賃金総額に労災保険料を掛けて計算します。しかし建設業の場合、数次の請け負いにより工事が行われます。仮に元請けの立場としたら、下請けに雇用される労働者の賃金まで把握することはできません。 そのため、賃金総額を正確に算出することは困難なので、賃金総額ではなく請負金額に労務費率を掛けて算出した額に労災保険料を乗じて金額を算出するという特例が適用されます。 なお、労務費率は実施される工事の内容で細かく割合が設定されているので、一定ではない点にも注意が必要です。

労務費も人件費の一部

労務費と人件費、どちらも同じと思っている方もいるかもしれませんが、人件費の一部が労務費であるといえます。 人件費は目的によりいろいろな名称に分けることができます。営業を担当する方の人件費は販売費、総務や経理の事務を担当する方の人件費は一般管理費、製造や生産のための人件費は労務費と分かれます。

労務費は直接労務費と間接労務費に分類される

また、原価管理を行う場合、どの製品を製造するためにかかった費用か明確な場合は直接労務費、明確でないものは間接労務費に分けることができます。

直接労務費

直接賃金(直接工が製品の製造に直接関係する作業に対しての賃金)

間接労務費

・間接作業賃金(直接工が設備や機械の修繕や製品運搬など、製品製造に直接関係しない作業に対しての賃金) ・間接工賃金(間接工の賃金) ・手待賃金(工具手配の不良や停電などにより作業できない状態において支払われる遊休時間に対する賃金) ・休業賃金(工場の従業員の休業に対する賃金) ・給料(工場の監督者や事務職員に対する給与、パートやアルバイトに対する給料も含む) ・従業員賞与手当(賞与や通勤手当、家族手当、住宅手当など) ・退職給与引当金繰入額(工場の従業員に対する退職給与引当金の繰り入れ額) ・福利費(会社が負担する健康保険料や厚生年金、労働保険料などの法定福利費) 直接労務費と間接労務費に区分することにより、適切に原価を計算できるといえるでしょう。 なお、ある製造ラインで常時作業しているかによって、直接工か間接工か判断します。他の作業は行わず、同じラインでずっと作業を行っているなら直接工、材料運搬、雑務、修理作業など、生産には直接関わらない作業を間接工といいます。