運送業で働く従業員が何らかの問題を起こした場合や、業績が悪化したときなどに給料を引き下げる減給は可能なのでしょうか。
そもそも給料に関することは労使間で労働契約を結んでいるため、原則、使用者側が一方的に変更することはできません。
ただし労働契約法では、使用者と労働者の合意によって労働契約の内容を変更することができるとはされています。
労働条件の1つである給料の減額についても、会社と従業員が合意すれば可能ということになるでしょう。
しかし労働者の合意を得ずに一方的に減給することは違法となるため注意が必要です。
そこで、運送業でも従業員の減給は可能なのか、違法にならないケースについて解説していきます。
運送会社側が、従業員の給料を一方的に減額することは違法です。
しかし次の場合には、適法に給料を減額することができ、違法にはなりません。
・合意を得ている場合
・就業規則を変更した場合
・労働条件を変更した場合
・懲戒処分として行う場合
それぞれどのようなケースなのか説明していきます。
給料を減額することや、減額後の額などについて、運送会社と従業員が合意している場合には適法に減額できます。
必要性や事情などを従業員に説明し、納得を得た上であれば問題ないということです。
ただしその合意内容が労働協約と相反している場合は、合意があった場合でも無効扱いとなり、労働協約に定める労働条件が適用されることになるため注意しましょう。
また、合意内容が就業規則の労働条件を下回っている場合も、合意は無効として扱われます。
減給など労働契約内容の変更においては、運送会社と従業員が合意することが原則ですが、就業規則を変更した場合も違法にはなりません。
ただ、就業規則の変更を一方的に行うことはできません。
変更が合理的なものであり、変更後の就業規則を周知させれば、例外的に変更が可能です。
そのため就業規則を合理的に変更したことで、給料の減額も有効になるといえます。
労働協約は、運送会社と労働組合が合意のもとで締結します。
ただ、労働協約によって労働条件を不利益に変更する方法もあるといえます。
原則、労働協約を締結した労働組合の組合員(労働者)に効力が及ぶ方法ですが、一定条件を満たすときにはその他の労働者も同様の効力が及びます。
労働組合の組合員の意見集約が、公正でなく十分ではないという場合や、手続に瑕疵があるときなどは、労働協約は無効として扱われます。
懲戒処分で行う減給については、次の場合に限り、有効といえるでしょう。
・就業規則に懲戒処分や戒告処分に伴う減給に関する規定がある
・個別の労働者に懲戒事由が認められる
・懲戒処分を行うことについて客観的に合理的・相当性が認められる