運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

運送業ではうつ病を発症する人が多い?労災請求件数から見る事実とは?

2018.05.02
分類:その他
入社1年目の某大手企業の女性社員が過労自殺するなど、社会に大きな衝撃を与えた事件は記憶にもまだ新しく、日本企業においての伝統的な働き方が問題視されています。 恒常的に実施される長時間労働から、逃げ場を失った社員は大手だけでなく、中小企業でも大きな問題となっています。 特に人手不足が深刻化している運送業でも、労災に繋がる社員や従業員の脳・心臓疾患やうつ病などの精神疾患については重く考えなければならない問題と言えるでしょう。

負担を抱え過ぎる社員が続出?

仕事が増えていけば、働いている既存の社員がかかえる負担は高まることになります。残業をしなければ仕事が終わらない状況が続き、早く人手不足を解消してくれと願う人も決して少なくないでしょう。 そもそも日本で正社員として働く場合、残業が当たり前という慣行が成立してきました。会社から命じられれば残業だけでなく、出張や転勤なども拒絶せずに受け入れるという体制ができているため、多忙な毎日を送る状況でだんだんと追いつめられていく人も少なくないはずです。 自ら命を絶つことまでは至らなくても、過労が重なって倒れてしまったり、入院してしまうケースも見られたりと深刻さを物語る状況があちこちの企業で見られます。

厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」から確認できる内容

厚生労働省では過重労働などが原因で、社員や従業員が発症した脳・心臓疾患、また、仕事によって強いストレスなどを抱えることになり、うつ病などの精神障害を発症した状況について、労災請求件数や労災支給決定件数を年1回取りまとめています。 その結果が2017年6月30日、平成28年度の「過労死等の労災補償状況」として公表されているので確認してみましょう。 ・うつ病などの精神疾患等も過労死等に含まれる 過労死等の認定件数は、従来、過労など脳・心臓疾患に関しての認定件数だけでしたが、過労死防止法でうつ病など精神障害、死に至らないケースなども過労死等と定義されるようになりました。 そのため、過重な仕事が原因で強いストレスなどを抱えてしまい、それが原因で精神障害を発症した場合にも過労死等に含まれることになっています。 ・運送業の労災請求件数 脳・心臓疾患による労災請求件数を確認していくと、請求件数で多い順に、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、製造業となっています。なお、運輸業・郵便業のうち、道路貨物運送業が最多です。 精神障害による労災請求や支給件数を確認した場合、請求件数で多いのは医療・福祉、製造業、卸売業・小売業、そして運輸業・郵便業と続きます。

ドライバーへの負担が過大なものになっていないか確認を!

なお、精神障害の労災認定要件は、精神障害発病前の6か月の間において、業務による強い心理的負荷が認められる場合です。また、それには具体的な出来事が定められています。 運送業の場合、出来事として挙げられるのは、1か月に80時間以上の時間外労働を行った、事故や災害の体験、特別な出来事などが挙げられます。 特別な出来事には、ドライバーが不足していることによる仕事量や内容の変化などの心理的負荷、また、発病する直前1か月間に160時間を超える連続勤務などの長時間労働などが挙げられています。 このような状況はすぐにでも改善するべきと言えますので、運送業の労災件数を縮小できる対策を企業では行っていく必要があると言えます。