運送業界が働き方改革を進める上で課題としてぶつかる部分とは?
運送業界は他の業界と比べたとき、長時間労働が常態化しており、働き方改革を進めていくことは簡単なことではありません。
それは業界特有の業務内容であることも関係していますが、猶予されている時間外労働の上限規制までに対応していく必要があります。
そこで、ドライバーの労働時間をいつまでにどのような形にすればよいのか、働き方改革で求められる労働時間についてご説明します。
運送業界が働き方改革を進めていく際に課題となること
運送業界の中でもトラック運送業は、全産業の平均より2割ほど賃金が低めであるのに対し、労働時間は1〜2割程度長めです。
これは現在、運送ドライバーなど人材不足を深刻化させている要因ともいえますが、働く時間は長いのに賃金は安いとなれば人手は集まりません。
高齢化と人材不足が進む問題を解消するためにも、働き方改革の取り組みでドライバーの処遇を改善させていく必要があるといえるでしょう。
しかし、トラック運送業などはドライバーが社外で業務を行う業界であるため、労務管理の難易度は非常に高い状況です。
運転日報・デジタルタコグラフ・ドライブレコーダー・チャート紙など、外で働くドライバーの労働状況を確認する方法は活用されているものの、完全に把握することは困難といえます。
正規と非正規の格差はなくすこと
さらに働き方改革にもあるように、正規・非正規の不合理な格差は解消させなければなりません。
これは「同一労働・同一賃金」と呼ばれる改革で、正規雇用者と非正規雇用者との間に発生する不合理な待遇差を解消することとしています。
運送業界では様々な手当がドライバーなど従業員に付与されていますが、正規雇用者にのみ支給され非正規雇用には支払われないということは不合理とされます。
中小企業は2021年4月からこの同一労働・同一賃金が適用されるため、非正規雇用のドライバーが多く在籍している運送会社などの場合、手当の趣旨を検討しつつ賃金制度を見直すことが必要といえます。
時間外労働の上限と割増賃金率にも注意を
そして「残業時間の罰則付き上限規制」の適用についても、ドライバーとそれ以外の従業員では対応が異なる点に注意してください。
ドライバー以外の方はすでに2020年4月から上限規制が適用されていますが、ドライバーについては年960時間の上限規制は2024年4月から適用されます。
上限規制は運行管理者や点呼担当者にも適用されるので注意が必要です。
例えば、1人でドライバーの乗務前点呼と乗務後点呼を行っている場合に、ドライバーは上限規制が当面猶予されていますが、運行管理者や点呼担当者だけ上限規制に引っ掛かるケースも出てくる可能性もあるので、気をつけましょう。
1か月60時間までの時間外労働の割増賃金率は25%ですが、60時間を超える残業の割増賃金率は50%となります。
運送会社では月60時間を超える時間外労働も発生する可能性が高いため、コスト負担は増えても正しい割増賃金率で計算した賃金を支払うことが必要です。