運送業で働く従業員の数が多ければ、中には現場の輪を乱す人や、秩序を乱す行動をする人なども出てくる可能性があります。
もしも現場に相応しくない行動をする従業員がいた場合には、懲戒解雇してすぐに辞めてほしいと考えるものでしょうが、簡単にはできません。
そもそも懲戒解雇とはペナルティとして従業員につきつける制裁ともいえるため、一定の要件を満たすことが必要です。
そこで、運送事業者が現場に相応しくない従業員を懲戒解雇することは可能なのか、必要な要件など解説していきます。
解雇は、使用者の都合で従業員との雇用関係を終了させることですが、退職勧奨も雇用関係を終わらせる方法の1つです。
退職勧奨は退職勧告ともいい、会社から従業員に説得して退職してもらうことであるため、従業員同意のもとでの退職となります。
しかし解雇は、従業員の同意を得ずに雇用契約を終了させるため、退職勧奨とは大きく異なるといえるでしょう。
解雇には、次の3つの種類があります。
・整理解雇(経営上の理由による解雇)
・普通解雇(経営上の理由以外で解雇)
・懲戒解雇(ペナルティとしての解雇)
このうち、整理解雇と普通解雇については、30日前の解雇予告が必要ですが、懲戒解雇の場合、解雇予告は必要ありません。
整理解雇と普通解雇で解雇予告がない場合には、従業員に解雇予告手当を支払うことが必要になりますが、懲戒解雇の場合でも解雇予告除外認定を受けていなければ解雇通告手当を支払うことになります。
懲戒解雇をするためには、まず就業規則に、どのようなケースが懲戒解雇の対象となるのか明記しておくことが必要です。
従業員10名以下の会社では就業規則を作成する義務はありませんが、万一に備えて作成することと、懲戒解雇に関する明記をしておいたほうがよいでしょう。
懲戒解雇を可能とするメリットとして、不適切な行動をとる従業員とすぐに縁を切ることができるのはメリットです。
しかし不当解雇として訴えられてしまい、敗訴すれば金銭の支払いを命じられ、従業員を復職させなければならないことがデメリットといえます。
懲戒解雇したことで支払っていなかった給与を、さかのぼって支払わなければならなくなります。
懲戒解雇は、合理的理由や社会的相当性が認められることが必要とされているため、その点も踏まえておくことが必要です。