個人や中小の運送業者が運送業務を請け負うときには、下請けとしてどのようなルールが適用となるのでしょう。
運送業務を請け負うケースとは、荷主から見れば再委託となる(宅配業者などから仕事を発注される)ケースと、荷主から直接依頼を受ける(通販業者など)ケースがあります。
それぞれ、下請けとして業務を引き受けるときはどのような法律が適用されるのかご説明します。
宅配業者と下請けである運送業者、それぞれの資本金額によるものの下請法が適用されます。
宅配業者の資本金が3億円超で下請けの運送業者の資本金が3億円以下の場合、もしくは宅配業者の資本金は1千万円超3億円以下で下請けの運送業者の資本金が1千万以下の場合です。
下請けとなる運送業者が個人事業主の場合には、宅配業者の資本金が1千万円超で下請法が適用されます。
下請法が適用となるため、支払い遅延・下請代金減額・買いたたき・不当な利益提供要請・不当な給付内容変更ややり直しなどは禁止され、契約書面など作成・保管において義務化されることになります。
荷主から運送業務を引き受けていない通販業者などからの請け負いについては、役務提供委託取引で下請法が適用されるのは、親事業者が第三者から委託を受けた業務の一部またはすべてを委託する場合だけです。
親事業者の業務を下請けとなる事業者に対し、役務提供委託するときには下請法は適用されないことがその理由といえます。
通販業者が宅配業者を介さず、直接下請けとなる業者に配送委託するのなら自社の業務となり下請法は適用されません。
ただ、このようなケースでも不当なパワーバランスが問題になるため、下請法ではなく独占禁止法の物流特殊指定といったルールが適用されます。
独占禁止法の物流特殊指定が適用されるのは、下請法と同じく資本金の要件の他、取引上の地位に優越があるときです。
また、禁止行為として挙げられるのは、支払遅延など下請法とほとんど同じ内容となっています。
運送業務を請け負う場合でも、誰からの仕事かによって下請法と独占禁止法の物流特殊指定のどちらが適用されるか異なります。
ただ、ルールはほとんど同じであり、法律に違反したときの公正取引委員会の措置なども変わりません。
しかし下請法では原状回復措置の定めがあり、下請けとなる事業者が不利益を被った分の回復について、公正取引委員会から勧告を可能としています。
これに対し独占禁止法の物流特殊指定では原状回復措置は認められておらず、公正取引委員会からの処分をできるだけ軽くするために原状回復されることが多いようです。
公正取引委員会の処分に従わなければ、下請法では過料や罰金などは科せられることはないものの、独占禁止法の物流特殊指定では過料や罰金の制裁を受けます。
下請法に違反することは同時に独占禁止法の優越的地位濫用違反になることもあるため、結果、下請法の勧告に従わないことで独占禁止法の優越的地位濫用違反に切り替わり過料や罰金などの対象になることもあるようです。