最低賃金が増額改定されていますが、運送業のドライバーの賃金体系は他の業種とは異なる複雑なもののため、賃金規定に注意が必要です。
そもそも運送業のドライバーは勤務形態が特殊で、朝早くから夜遅くまで配送業務を行います。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ECサイトの利用が増え物量は増加傾向にあり、新規で運送業界へ参入する業者が増えるなど運賃の競争も激化している状態です。
生き残りをかけて運送業各社は、ドライバーの賃金を見直し改善させていくことが必要となっている状況ですが、どのような賃金体系になっているのか確認しておきましょう。
運送業のドライバーの賃金体系は運送業者によって異なりますが、一般的に使用されているものは主に次のケースです。
・基本給+住宅手当(固定給)+無事故手当+皆勤手当+残業手当
・基本給+家族手当(固定給)+無事故手当+残業手当
・基本給(固定給)+食事手当+能率手当+無事故手当+皆勤手当
・基本給(日給または時間給)+残業手当+歩合給(運行手当または奨励給)
運送業者によっては、固定給部分を極端に少なくして変動する歩合給を多くし、賃金の見た目を世間一般並みに見せようとするケースも中にはあります。
固定部分を増やさず、賃金の半分以上を占めることとなる変動部分を大きくすると、賃金が安定しない職種と捉えられてしまいます。
確かに情勢が厳しく、少しでも固定給を少なくしたいと考えがちですが、ドライバーの定着率を高めていくためにも好ましいとはいえません。
会社が生き残るためには、変動部分の占める割合が大きすぎる場合には、すぐに見直しをしたほうがよいといえます。
運送業界で固定残業制を導入する業者も増えつつありますが、この場合、いくら残業をしても残業代は増えません。
固定残業制のすべてが悪いとは言えませんが、実態を無視し残業代を安易に削減することを目的にした固定残業制の導入は危険です。
実態と異なる固定残業代の導入について、労働基準監督署から是正を求められれば2年間遡って未払い分を精算しなければならなくなるからといえます。
運送業のドライバーの賃金は複雑で、どこをどのように見直すべきか迷いがちですが、一方的にドライバーが不利になるような賃金体系で計算することは避けるようにしましょう。