物流業界で問題視されている重層下請け構造の問題。元請けと下請けにおいて、取引条件の改善などが差し迫って重要な課題となっています。
そもそも物流・運送業界は人手不足が深刻化している状況ですが、この重層下請け構造により、下請けの立場となる事業者はさらに人手が集まらない状況を作ってしまいます。
重層下請け構造は下の層になるほど運賃は安くなってしまい、資金繰りが悪化しやすいことが特徴です。ただでさえ運送業界は人手不足が問題視されている状況の中で、下の層に位置する下請けはさらに人材確保が進まなくなってしまうのです。
運送業界の多くは中小・零細の事業者が占めているため、経営環境が改善されなければいつまでたっても深刻化する人材不足を根本的に解決させることはできないといえるでしょう。
運送業界における重層下請け構造は、上の層から、荷主、物流子会社、元請会社、地域元請会社、実車会社という形が一般的です。
このような状況で、仕事はあってもドライバーが不足しており、特に深刻なのは中長距離ドライバーの平均年齢が55歳以上といわれていることです。
今はまだ現役として働くことはできても、10年後にはドライバーの多くがリタイアしてしまい、誰が荷物を運ぶのかという問題が出てきます。1台に1人がハンドルを握ることが必要になるため、人が不足していれば運べるものも当然減少します。
物流需要は増え、仕事が増えているのに、仕事を受ける人材がいないという厳しい状況が今の運送業界の現状なのです。
若いドライバーが減少しているのは、社会全体の若い世代の人数が減っていることが理由であり、その限られた人材をいろいろな業界が求めあっている状態です。
しかし運送業界は仕事内容や収入、働き方といった部分で、若い世代の目には魅力的に映らないことが多く、運送業界で頑張りたいと考えてもらえないことが人手不足の大きな要因となっているでしょう。
その上重層下請け構造により、下の層になればなるほど運賃は下がってしまうので、せっかくドライバーを雇用しても給料が安ければすぐに辞めてしまう可能性もあります。
人手不足に拍車をかける理由は何なのか考え、根本的な構造そのものを変えていかなければ、今の運送業界の人材不足問題は解決に至ることはないのかもしれません。