年次有給休暇は、労働者が仕事する上で与えられる権利であり、使用者がその権利を制限することはできないとされています。
運送業は人手不足が慢性化しており、一人ひとりの負担が大きくなっているといえるため、気軽に年次有給休暇を取得しにくいケースもめずらしくありません。
しかし年に最低5日は年次有給休暇取得が義務付けられているため、人手が足らないことを理由に休暇取得を制限できないことに注意してください。
そこで、運送業の有給休暇取得率と、年次有給休暇取得義務化について紹介していきます。
「年次有給休暇」とは、労働基準法で定めのある労働者の権利の1つであり、一定期間以上勤務を続けた労働者に対し付与される休暇です。
取得し休んでも、賃金は減額されず支給されます。
労働者に有給休暇が付与されるのは、半年間の継続した雇用と全労働日の8割以上出勤するという2つを満たすケースです。
用件を満たせば、社員やパートなど雇用形態に関係なく付与される休暇であり、働きやすい環境づくりの一環として適切に管理することが求められます。
「有給休暇取得率」とは、1年間で従業員に付与した有給休暇のうち、どのくらい取得されているか割合であらわす数字です。
有給休暇の取得率は次の計算式で算出できます。
取得率(%)=すべての雇用者の有給休暇取得日数計÷すべての雇用者の有給休暇付与日数計×100
運送業の有給休暇取得率は、運輸業・郵便業の業種でみると約6割であり、平均をやや上回っているものの満足度にはつながっていません。
働き方改革が進められていることで、有給休暇取得を促進する運送業も増えているといえますが、従業員も自身のライフワーク・バランスを考えた上で取得することになります。
ただ、健康に働き続けるためには必要不可欠な制度といえるため、確実に取得することが大切です。
運送業では、2024年4月から時間外労働の年間960時間の罰則付き上限規制が適用されます。
ただ、休日出勤は時間外労働の範囲には含まれないなど、運動ドライバーなど自動車運転業務は一般企業の時間外労働の上限規制と異なる扱いです。
しかし年最低5日という有給休暇取得の義務化については、運送業も一般企業と変わらず守ることが必要となっています。
有給取得義務化の対象は、年に10日以上年次有給休暇が付与されている従業員であるため、該当する労働者がいるときには注意してください。