運送業で労働災害が起きてしまうその背景には、たとえば危険な作業手順があることや、職場環境が整備されていないことが関係しています。
そのため作業手順の方法については安全性を確認し、正しい手順で行うように徹底した教育などを行うことが必要です。
労働災害はこのような物理的な危険以外にも、たとえば長時間労働による身体の異変や、過労によるストレスによる疾患なども含まれます。
運送業では労働者が安心して働くことのできる、安全で衛生的な環境整備が求められますが、万一労働災害が起きたときの災害補償や、労働者を救済する制度について解説していきます。
「災害補償」とは、労働災害に遭った労働者を救済し、福祉を図るための制度です。
危険な環境や状態が存在していたことにより発生した業務上の負傷・疾病に対する補償であり、使用者に過失がなかった場合であっても使用者の支配下で発生した災害は使用者が一定の責任を負うことになります。
労働基準法に規定されている災害補償は、主に5つです。
療養補償(治療に必要な費用)
休業補償(平均賃金の100分の60)
障害補償(障害の程度に応じて最高平均賃金の1,340日分)
遺族補償(平均陳羣の1,000日分)
葬祭料(平均賃金の60日分)
これらの災害補償は実際には、労災保険の保険給付から行われることになります。
災害補償は、労働者が労働災害に遭った場合でも、その後の生活を安心して送ることのできるように必要な制度です。
実際は労災保険の保険給付から支払われるものの、使用者にとっては負担が大きくなる制度ともいえるでしょう。
もしも労働災害が起きた場合、労災保険がなかったらどうなるでしょうか。
労働者の事故が周囲に知られたり万一のことがあったりしたことを周囲に知られ、会社経営を続けられなくなるのではないかという不安や、労働者に補償するお金もなく困るという心配から事実の隠蔽を図ろうとする可能性もあります。
そのため国では、労働者を一人でも雇用する事業所に対し、労働者災害補償保険(労災保険)に加入することを法律で義務付けています。
労災保険に加入に、労災保険料を納めることで、労働者に万一のことがあった場合にでも対象の労働者やその遺族に保険給付という形で補償されます。
労災保険に会社が故意に加入していない場合でも、労働者が労働災害に遭ったときには給付請求は可能となっているため、後で未加入が発覚すれば災害で療養開始後3年間に渡り支給された保険給付額の100%が徴収されます。
また、最大2年間にさかのぼり保険料に対し10%の追徴金を上乗せした金額を支払うように求められるため、必ず加入しておきましょう。
悪質なケースは労働基準法や労働者災害補償保険法の違反による処分の対象となり、6か月以下の懲役または35万円以下の罰金が科される場合もあります。