2021年1月の裁判で、某運送会社で運行管理など任されていた従業員に対し、倉庫勤務を命じる人事異動が無効とされる判決が出ました。
これは、これまでのキャリアなどを考慮した上で、人事異動を無効とする判断が広がってきたことを意味しますが、配転が必要になった場合にはどのような対処が必要なのでしょう。
そこで、運送業で人事異動が無効とされたケースや、会社に求められる考え方や対応について解説していきます。
規模が大きく複数の部署に分かれている会社の場合、効率的に組織を動かすことなどを目的として、多様な能力と経験のある人材育成のため人事異動を行う場合も多々あります。
人事異動は、事業所内で行うだけでなく、勤務地が変わることもあるため、転勤や配置転換は「配転」と呼ばれています。
これまでは配転に関する会社の裁量の範囲を比較的広めに認めており、就業規則などに業務上の都合で配転を命ずることができるといった規定がされており、実際に配転が頻繁に行われている場合には、会社は労働者の個別的な同意なしに配転を命ずることができるとっされています。
会社は労働者の配転を命ずることができるとされていますが、以下の特段の事情がある場合には転換の権利濫用とされ無効として扱われます。
・業務上必要性のない場合
・不当な動機や目的である場合
・労働者に著しく超える不利益を負わせる場合
2020年1月には、運送会社で運行管理を任されていた従業員へ倉庫勤務を命じた人事異動に関して、無効として扱う判決が出されています。
この判決では、配転が従前の最高裁判例と同じ枠組みで無効か判断されたといえますが、一般的な職務キャリアを積んだ労働者を保護しているといえるでしょう。
運送会社は、従来の手法に従った人事異動を命じるのではなく、労働者の立場によりそった判断が必要になるといえるでしょう。
そのため人事異動を命じる際には、従業員のキャリアなど十分に尊重・配慮し、内示するときには面談を行って業務上の必要性など具体的・丁寧に説明し納得を得ることが大切です。
人事異動は会社の専権事項である一方で、考え方にとらわれず対象の従業員としっかりとコミュニケーションをとるなど納得できる形で実施されるべきといえます。