運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

運送業の配置転換において注意しておきたいポイントとは

2023.09.02
分類:総務

運送業でドライバーとして働いている方が、たとえば頻繁に事故を起こす場合や、交通違反など繰り返し改善が見られないときなど、事務担当などに配置転換を検討することもあるでしょう。

 しかしドライバーとして採用された従業員が配置転換に対し納得せず、拒絶した場合には配転拒否を理由とした懲戒処分なども可能なのでしょうか。

 そこで、運送業の配置転換において注意しておきたいポイントについて解説していきます。

会社の配置転換命令権について

 会社の「配転」は、従業員の配置を変更することであり、長期間に渡り仕事や勤務場所が変わることになります。

 同一勤務地とする事業所内の所属部署変更は「配置転換」といい、勤務地が変更されることを「転勤」といいます。

 社員は長期的に雇用することが予定されているため、会社の側に人事権の1つとして社員の職務内容や勤務地を決定する権限が帰属しています。

 実務上の配転命令権は、就業規則などの配転条項に「業務の都合上、出張・配置転換・転勤を命じることがある」などの規定がされていることが一般的です。

  

配置転換命令の制限

 従業員の配転命令を根拠づけるのは、労使間で結ぶ労働契約上の職内容・勤務地の配転命令権です。

 配転命令権については労働契約関係でその範囲が決められることになるため、労働契約上、職種・職務内容・勤務場所が限定されていれば労働者の同意なしで職種変更の配転命令は認められないといえるでしょう。

 特殊な技術や技能、資格などのある職種の場合、長気に渡り同じ専門的な職種に従事していることもあります。

 たとえば医師などがその例ですが、この場合は労使間で職種限定に関する合意がされていると判断され、異なる配転命令は無効となる場合があるといえるでしょう。

  

権利濫用は禁止

 会社側に配転命令権が認められるとしても、本来配転命令は社員の利益に配慮し行使されるべきといえます。

 そのため権利を濫用する行為はしてはならないといえるでしょう。

 業務上の必要性があるからこそ行われるべきであるため、本人の職業や生活上の不利益に配慮することが必要です。

 過去の判例では、転勤命令に業務上の必要性がない場合や、業務上の必要性があっても他の不当な動機・目的のあるときや、労働者に著しい不利益を負わせるものであるときには権利濫用として扱われることになるため、争いになった際には無効と判断される可能性が高いといえるでしょう。