企業会計基準委員会(ASBJ)は、日本で初という収益認識に関する包括的な会計基準を2018年3月30日公表しました。これらの収益認識会計基準は2021年4月1日以降開始する連結会計年度、事業年度の期首から強制的に適用されることとなります。
そこで、物流業界にこの収益認識基準がどのような影響を与えることとなるのかご説明します。
収益認識基準では、
①顧客との契約の識別(収益認識基準の適用対象となる契約か)
②契約における履行義務の識別(契約に複数のサービスなどが含まれる場合には個別に会計処理する必要のあるものを決める)
③取引価格の算定(サービスなどと交換に受け取る権利を得る契約対価合計の算定)
④取引価格を契約において履行義務に配分(契約対価合計を個別に会計処理する必要のあるサービスなどに配分)
⑤履行義務充足の際に収益を認識(サービスなどに対する支配を顧客に移転したときに収益を認識)
という5種類のステップから構成される収益認識の基本とする原則が採用されています。
この5つのステップの中でも、物流業に影響すると考えられるのは①~③ですが、①②について説明します。
同一の顧客と同時またはほとんど同時に結んだ複数の契約は、次のいずれかに該当するときには複数の契約を結合させて会計処理することになります。
・複数の契約が同一の商目的を有するものとして交渉された場合
・1つの契約で支払われる対価が他の契約の価格や履行により影響される場合
・複数の契約で約束した財またはサービスが単一の履行義務となる場合
さらに顧客との契約において約束したサービスなどを評価し、顧客に次のいずれかを移転する約束のそれぞれにおける履行義務として識別しなければなりません。
・別個の財またはサービス(またはその束)
・一連の別個の財またはサービス(実質的に特性が同じで顧客への移転のパターンが同じの複数の財またはサービス)
物流業では同じ顧客に対し、輸送、保管、入出庫、ラベル貼り、検品、仕分など関連する業務やサービスを複合して提供することとなります。
同一の顧客に複数の業務を契約別で提供するときには、契約を結合すべきか検討することが必要です。そして単一契約や結合された契約に複数のサービスが含まれる取引は、それぞれ別個の履行義務であると識別しなければならないか検討することも必要です。
たとえば、集荷、梱包、配送などのサービスが1つの契約に含まれる場合もありますが、それぞれのサービスの相互関連性や依存性が高い場合には、1つの運送契約として履行義務が識別されるということになるでしょう。