新型コロナウイルスの影響により新しい生活様式を実践することが求められていますが、感染者を拡大させないためには人々の接触機会を大幅に減少させることが必要だからです。
しかし物流業界は、在宅でのテレワークですべての業務を完結できるわけではありません。不特定の人同士が接触しなければならない場面も多くあり、管理業務での点呼や巡回指導などで人と人との接触を回避できないものか考えていく必要があるでしょう。
物流企業が社外との接触機会を調整することは難しくても、社内の人同士の接触を避けることは心掛けにより実行できます。
しかしドライバーに対して行う運行管理者の点呼は、対人で行わなければならないと法令で義務付けられています。
国土交通省による貨物自動車運送事業輸送安全規則を確認しても、乗務の前後で対面により点呼を行うことが求められていますが、なぜ対面でなければならないのでしょう。
自動車局安全政策課によれば、ドライバーの顔色や声色の普段との違いなど、至近距離で健康状態を確認するためとされています。
人同士の接触機会を少なくすることを求められていても、本当に対面での点呼は必要なのかと考えてしまうものでしょうが、マスクを着用し感染防止対策を講じた上で行うなど工夫が必要です。
国交省は2020年度末までに、運行管理者側の働き方改革を進めるため人と同レベルのAIロボットが対応するのなら、法令上の点呼とみなす考えも示しているようです。
人と人との接触削減については、貨物自動車運送事業法の適正化事業実施機関(トラック協会)での指導のあり方についても記載があります。しかし指導を行うことという記載はあっても、巡回や対面などの手法に対する記載はありません。
今後、新型コロナの感染収束が確認できない状況では、巡回指導ができなくなる可能性もあるといえますし、対面によるものではない形がとられる可能性も出てくるでしょう。
ただ、運行管理などの記録にミスなどがあれば説明が必要となるので、対面によるもの以外はありえないとも考えられます。
実際、AIでの点呼を活用したくても、人と同じレベルかの要件が国交省から示されず、外部販売に勢いがつかなかった経緯もあります。まだまだ積み残している課題やこれまでのやり方への踏襲など、技術上は可能であるのに利便を受けることができない現場が多いようです。