物流・運送という分野は、労働時間が長いのに賃金が安く、危険を伴う労働によりケガを負うこともあるなど、ブラックな業界といわれてしまうこともあります。
すべての物流・運送会社がこのようなブラック企業といわれるような状況ではなく、労働環境を改善しているケースもありますが、それでもまだ多くの業者が改善できていない状態といえます。
さらに今、国が打ち出している働き方改革の労働時間短縮による取り組みの内容が、さらに物流・運送会社をブラック企業にしてしまう可能性があるのです。
2019年4月からは労働基準法が改正となり、時間外労働も年720時間を上限に規制されています。なお、中小企業は2020年4月からとなる上に、運送業のドライバーに対する規制は5年間という猶予が与えられ、さらに通常よりも長い年960時間を上限とする規制がスタートします。
物流の現場では、ドライバーとドライバー以外の作業(事務や庫内作業)を行う方を区分けし、それぞれ異なる時間規制で業務を行うことが求められているのです。
ただ、猶予の設けられているドライバーの労働時間が変わらないのなら、事務や庫内作業を行う方の労働時間もそれに伴い長時間に及んでしまうでしょう。
ドライバーが戻ってこなければ、配車係やフォークリフトオペレータなども業務を終了させることができず、運送管理者も終了点呼をすませることができないので業務を終えることができないからです。
もし法令違反になれば罰則対象となるので、どうするべきかと頭を悩ませている現場もあるようです。
また、普段は配車係や運行管理の業務を行っているけれど、人手が足らないときにはドライバーとして業務を行うこともあるという場合、ドライバーとすればよいのか、ドライバー以外の担当としてよいのか判断に困ることもあるようです。
厚生労働省は、実態として車を運転する時間が労働時間の半分を超え、業務に従事する時間も年間の労働時間の半分を超えることが見込まれるのなら、ドライバーとするという解釈をしているようです。
しかし、半分いう曖昧な範囲の指定で、中にはどちらか判断しにくいグレーゾーンともいえる場合もでてくるでしょう。
働き方改革で労働時間を短縮しようとする動きが、むしろ企業をブラック企業にしてしまう可能性があるとなるなど、物流・運送業界の現場では今後もどのように運用するべきか考えなければいけない状態です。