業績の拡大を目指して人員の増強をしたいと思いますが、一方でトラック運転手は労働時間の管理が難しいと感じています。
トラック運転手との契約を、雇用契約ではなく業務委託契約にすれば、労働時間の管理をしなくともよいという話を聞いたのですが、本当でしょうか。
従業員が「労働者」に該当するかどうかは、企業と従業員との契約関係が雇用契約と解釈されるかどうか、ひいては労働基準法や労働契約法等、労働関係法規の適用があるかどうかを左右することになります。
「労働者」に該当すると判断された場合、①残業代支払義務の発生、②従業者との契約関係終了時における解雇規制の適用、③労災補償の対象や業務上災害に対する使用者責任等、様々な法的負担を受けることになり、労務管理コストが増大することになります。企業の人事戦略も左右することになるため、慎重に検討する必要があります。
労働基準法・労働安全衛生法・労災保険法など、個別的な労働関係法の適用対象となる「労働者」になるか判断するときには、使用者の指揮命令のもとで働き賃金が支払われているかにより判断します。
契約上のことではなく、あくまでもその実態で確認することになるため注意してください。
なお、労働者性を判断するときには、次の基準を参考にするとよいでしょう。
【使用従属性に関する判断基準】
○「指揮監督下の労働」に関する判断基準
・仕事の依頼・業務従事の指示などに対する諾否の自由の有無について
・業務遂行上の指揮監督の有無(業務内容・業務遂行の方法に対する指揮命令の有無など)
・拘束性の有無
・代替性の有無
○報酬の労務対償性
【労働者性の判断を補強する要】
○事業者性の有無(機械・器具の負担関係・報酬額など)
○専属性の程度
運送業の場合には、トラックドライバーの中でも特に、「傭車運転手」が「労働者」に該当するのかという点が問題になりやすいといえます。
「傭車運転手」とは、自己が所有するトラックなどを使って、他人から受けた依頼・命令に基づき運送業務に従事する方にことです。
「傭車運転手」の労働者性については、所有するトラックなどが高価なことから、使用従属性の有無を判断し、本人が事業者として活動しているのかという判断も必要となります。