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運送会社が労働時間上限を超過してしまうことによるリスクとは

2022.05.03
分類:総務

20194月に労働基準法が改正され、労使間の合意で時間外労働の延長が可能となる「特別条項付き36協定」も内容が変更されました。

時間外労働については、運送業界など人材不足や長時間労働が常態化している業界を対象に、5年間の猶予が与えられているものの、いよいよ20244月からは労働時間上限を超過しない働き方が必要となります。

そこで、運送会社が労働時間上限を超過してしまうことでどのようなリスクがあるのか説明していきます。

20244月から運送業の労働時間上限は「法定労働時間+年960時間」まで

運送・物流業界の改正労働基準法が施行されるのは20244月からのため、残業時間の上限規制に伴って残業代など収入が減少することを不安に感じるドライバーなども少なくありません。

残業の上限規制は、月80時間・年960時間までとされているため、20244月を目処にトラックドライバーの労働時間上限は「法定労働時間+年960時間」までになります。

なお、1か月あたりの残業時間が45時間を超えてよいのは1年につき6か月までという規定も設けられていますが、ドライバーには適用されません。

 

労働時間上限を超過することによるリスク

運送業で働く従業員の労働時間が上限を超過してしまうと、主に次のリスクが発生しやすくなります。

過労死が起きやすくなる

労働時間が長くなると、疲労が蓄積されたままの状態となりますが、実際に過労死がもっとも多い業界が運送業・運輸業です。

長時間労働を原因として従業員が過労死してしまったとき、労災認定されれば運送会社は労働者の遺族に対し補償することが必要となります。

政府労災保険に加入していれば一時金が日給換算で1,000日分まで支給されますが、訴訟などに発展すれば補償する金額もが数千万円や億単位までふくらんでしまうでしょう。

過労死リスクを避けるため、厚生労働省の改善基準はもちろんのこと、「脳・心臓疾患の労災認定」の「過労死ライン」を考慮することも必要です。

厚生労働省が公表している過労死などが発生しやすくなるのは、

1か月の残業時間が100時間を超える

2か月連続で残業時間が80時間を超える

などの働き方です。

長距離を移動するトラックドライバーは、過労死ラインを守ることも難しい状況が出てくるでしょう。

しかし可能な限り健康に配慮し、休憩や休息をとることのできるスケジュールを組むことが求められます。