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運送ドライバーが事故を起こしたときに運転者に賠償請求することは可能?

2021.05.02
分類:リスク

運送会社で働くドライバーがたびたび交通事故を起こす場合には、事故が発生するたびに現場検証や事故処理に時間もかかる上、その時間も労働時間としてカウントされてしまいます。

対人・対物は任意保険で賠償されても、車の修理代は会社が負担しなければならないなど、運送会社としてえは納得ができないことも多々あるようです。

そこで、このような場合には事故を起こしたドライバーに対し、罰金制度などを設けることは可能なのかと考える経営者もいるようですが実際どうなのでしょう。

交通事故の責任はドライバーと使用者どちらが負うのか

たとえばドライバーが事故を起こした場合、その過失割合が5割を超えているのなら懲戒処分として〇万円の減給、それに加え車の修理代は上限〇万円の範囲で負担といった罰金制度を設けたいと考えたとしましょう。

交通事故の責任は、原則として運転者が負うことになるのですが、運転が事業執行によるものの場合には使用者である会社も責任を負わなければなりません。そして事故車両の所有者が会社であれば、その責任も会社が負います。

対人・対物賠償は任意保険を完備していれば、被害者に対しての補償は保険金で支払いがされることになるでしょう。

しかし保険を使えば翌年度の保険料が高くなるため、免責を設定しておき免責額の範囲内でドライバーに負担させるという方法も検討できます。

会社所有の車の修理代を請求することは可能

会社所有の車が事故で破損してしまった修理代については、その車を運転していたドライバーに損害賠償請求することも可能です。

ただし問題なのは、その修理代をすべてドライバーに負担させてもよいかという点です。

過去の裁判例などでは、ドライバーが負担する割合は2分の14分の1程度の範囲とされていることが多いですが、故意に事故を起こしたのであれば全額賠償請求することも認められるでしょう。

事前に違約金額を定めることは違法扱いに

また、減給処分は法律で明確な上限規制があり、1件の事案について平均賃金1日分の半額を1度のみです。

就業規則に懲戒事由として、車両事故については明確な定めをしておくことは望まれますが、事前に違約金額を定めることは違法とされるため具体的にいくらを支払うことが必要と決めることはできません。

たとえ減給処分という名称を使っていたとしても、実質的に罰金扱いであれば違約金の定めに該当してしまいます。