2019年9月に発生した台風15号は、千葉県内に大規模停電などの甚大な被害をもたらしました。千葉での最大瞬間風速は57.5mという観測史上最高クラスの勢力でしたが、他にも複数の台風発生でトラックが横転する深刻な事故が発生しました。
そこで、物流現場では台風による横転事故などが発生しないように、どのような対策が必要になるか考えておきましょう。
台風が発生したとき、荷主から「大丈夫?」と気にしてもらうことは嬉しい反面、「気をつけて」といわれてしまうと、事業者は大きなプレッシャーを抱えることになります。
実際、従業員が出勤できないためドライバーを倉庫で待機させ、台風による渋滞に巻き込まれ時間は遅くなったものの完了させたという報告もあり、完全にオーダーが停止したわけではないようです。
荷主側は荷主勧告制度が適用されないか、荷主の指示によるものと判断されないか懸念しながらも、そのような言葉のプレッシャーで事業者が運行したのなら荷主が関与したとも考えられます。
しかし実際には荷主が関与しているのか判断できない部分もあり、万一横転などの事故があっても荷主勧告制度が適用されるともいえません。
港湾施設なども、台風15号では強風で空コンテナが荷崩れしてしまわないように、しっかり固縛ベルトで対策していたのに切れてしまったという報告もあるので、今後は最大瞬間風速60m以上を想定してワイヤーで固縛するなどが必要となるでしょう。
台風が発生した場合には、前もってコンテナの段は低めに固縛するといった対策も考えられますが、それでも想定外の事故や被害が増えていることを再認識しておくことが必要となるでしょう。
また、2018年9月に発生した台風21号ではマグネシウムを積載したISOタンクコンテナが浸水し大火事が発生したという事故もありました。
台風による強風でトラックが横転してしまえば、積載している中身によっては大きな火災が発生することになるでしょうし、ドライバーの安全も守れなくなります。
台風が発生した直後に荷主とのミーティングの中で、台風発生時の対策を話し合うことは多くても、その一時期だけで継続性がありません。
そもそも台風前後は交通網が混乱することで道路も渋滞してしまいがちですが、仮に事故が発生しなかったとしても運行管理上のリスクもあるといえます。
しかし、事業者は立場が弱く、荷主に台風で危険が高く迎えないことを伝えることはできないものです。そのような荷主と事業者の力関係を配慮した上で、ガイドラインに運行中止を判断する内容を盛り込んでもらいたいと考える事業者も多いのも無理はありません。