運送業も物流危機は無視できない問題ですが、「上級企業」であるAmazonなどは大手宅配から脱却し、「下流宅配」と呼ばれる中小運送業者も下請けからの脱却に乗り出しています。
まさに物流危機が、従来までの物流・運送の構造に変化をもたらしているといえますが、具体的に市場ではどのような変化が見られるのか説明していきます。
宅配市場は、ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便の大手3社が全体の9割以上のシェアを握ってきました。
しかしこの構造にも大きな変化が起きています。
ECサイト需要の拡大により荷物量が増加したことで、新たな配送プレーヤーの参入や立ち位置を変える企業が出るなど、従来までの3社3強という牙城は崩れてきています。
その背景には、まずアマゾンなど宅配大手の大口顧客といった上流位置にいる企業が、自らで物流網を構築していることが挙げられます。
そして中小の下請け運送業者が、上流からの直接仕事を受注することが増えたことが挙げられるでしょう。
この流れは、元請けから下請け、下請けから孫請けに仕事が渡ることにより、荷物を実際に運ぶ運送業者は利益を十分に受け取ることができない重層下請構造から下請けが脱却を図ったことが関係します。
中小運送業者は直接仕事を請け負うことにより、重層下請構造で発生していた中間マージンを抜かれることなく取引できるようになります。
そして仕事を発注する荷主も、割安の運賃で依頼できることがメリットです。
割安を実現するために、細かい配達時間の指定はやめ、人口密度の比較的高いエリアを中心とした依頼をするといった、シンプルなサービス内容なども実現されドライバー負担も軽減されています。
下請けが元請けになるLCC宅配ビジネスに乗り出すラストワンマイル協同組合には、中小運送業者約50社が宅配事業を展開しています。
これまで企業間取引(BtoB)の物流を担当していた加盟業者も多く、コロナ禍でBtoBの依頼が減少する中、市場が拡大している企業と消費者間取引(BtoC)へと移行しているといえます。
物量の多い荷主などは、大手宅配よりも億円単位で安い提案ができるといったメリットもあるようです。
取引先は増やしたとしても大口顧客や宅配大手専属にならず、一方的な価格設定による不利な条件や、突然仕事を切られるリスクを避け、独立した立場で仕事を請け負うケースが多くなっているといえるでしょう。